阿部正桓

阿部正桓：激動の時代を生きた福山藩主

阿部正桓（あべ まさたけ）は、江戸時代末期から明治、大正時代にかけて活躍した、日本の華族です。従二位勲四等伯爵の位階勲等爵位に叙せられ、備後福山藩の第10代にして最後の藩主、そして初代にして最後の知藩事を務めました。阿部家宗家14代当主という重要な役割も担っていました。

波乱の始まりと福山藩

浅野懋昭（安芸広島藩主・浅野重晟の孫）の三男として生まれた正桓は、幼名は浅野元次郎でした。広島藩第12代藩主・浅野長勲の実弟にあたります。慶応4年（1868年）、わずか18歳で備後福山藩9代藩主・阿部正方の養子となり、名を正桓と改めました。福山城へ入り家督を継いだものの、実は正方は前年末に既に亡くなっており、その死は隠されたままの入嗣でした。正方の死は翌月になって公表されました。

福山藩は、戊辰戦争勃発直後から新政府に恭順の意を示し、新政府から派遣された広島藩軍が福山城に入城しました。その後、伊予松山への出兵や播磨西宮の警護、大阪府天保山砲台の警護など、重要な任務を遂行しました。正桓自身も、明治元年（1868年）9月には箱館戦争への出兵を命じられ、北海道函館へと向かい、戦功を挙げました。

藩政改革と廃藩置県

明治2年（1869年）2月、正桓は版籍奉還を願い出て、同年8月には福山藩知藩事に任命されます。藩主として、近代的な藩政改革に着手しました。「福山藩職員令」を発布し、従来の家老を中心とした藩組織を、大参事を中心とした近代的な組織へと大胆に改編。人事も刷新し、藩政の近代化を推進しました。

しかし、明治4年（1871年）7月の廃藩置県により、正桓は知藩事を罷免され、東京府への上京を命じられました。福山を出発しようとした9月、上京に反対する民衆が福山城下に集まり、一部が暴徒化して藩兵と衝突する事件が発生。騒動は藩内各地に広がり、打ちこわしや放火が相次ぎました。正桓は自ら民衆の説得にあたるなど尽力し、出発は11月まで延期されました。

華族としての晩年

東京府東京市本郷区（現在の東京都文京区）に移り住んだ正桓は、明治17年（1884年）に伯爵に叙せられました。明治18年（1885年）には、福山教育義会会長として旧藩校誠之館の維持に尽力しました。大正3年（1914年）、従二位に叙せられ、64歳で生涯を閉じました。

正桓の次男・忠正は、養子として旧姫路藩主酒井伯爵家に入り、後に農林大臣などを歴任するなど、活躍しました。阿部正桓は、激動の時代を生き抜き、藩主、そして華族として、日本の近代化に貢献した人物と言えるでしょう。彼の生涯は、幕末から明治、大正へと続く日本の変革期を象徴するものであり、歴史研究において重要な位置を占めています。 彼の功績は、福山市の発展にも大きく貢献したと言えるでしょう。

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