阿部正静

阿部 正静（あべ まさきよ）

阿部正静は、江戸時代後期の大名であり、陸奥国白河藩の第8代藩主として知られています。彼は忠秋系阿部家の16代目にあたります。正静は後に白河藩第7代藩主となる阿部正外の長男として生まれました。彼の運命は、父の急死により動き出すことになります。

元治元年（1864年）3月4日、3000石の旗本であった父が白河藩主・阿部正耆の訃報に接し、正静は藩主の地位を引き継ぎます。しかし、彼の藩主就任は困難な状況に包まれていました。慶応元年（1865年）10月、父が兵庫開港要求事件に関連して謹慎処分を受け、その後の慶応2年（1866年）には強制隠居を命じられ、正静は藩主としての重責を担うことになります。しかし、同日に棚倉藩へ転封される命を受け、さらなる困難が待ち受けていました。

慶応3年（1867年）1月に正静は実際に棚倉藩へ移封されましたが、白河藩主としての権利を持つはずだった松平康英の移転先が変更された結果、白河藩は幕府の直接支配の下に置かれることとなりました。これにより白河城は、幕府の役人によって管理されることとなり、正静は再び藩主に戻る機会を失うこととなります。慶応4年（明治元年、1868年）2月には阿部家に白河再封の命令が下されましたが、これは3月に中止され、藩主不在の状況が続きました。

その頃、戊辰戦争が勃発しました。正静は奥羽越列藩同盟に参加する立場を取っていましたが、消極的姿勢を貫いていました。5月1日の白河口の戦いでは、新政府軍に敗北し、藩の家老阿部正煕が戦死するなど痛手を被りました。また、棚倉城も官軍の攻撃を受けて陥落しました。この時、正静は生き残った藩士たちと共に撤退しますが、9月18日に保原陣屋で降伏を余儀なくされました。

その後、彼は新政府から同盟参加の責を問われましたが、「主導したのは家老の阿部内膳である」と釈明し何とか改易を免れました。しかし、藩の石高は6万石に削減され、正静は義理の叔父である正功に家督を譲り隠居生活に入ることとなりました。以後、彼は東京に移り住みましたが、明治11年（1878年）1月23日に東京でこの世を去りました。享年は若干28歳でした。

正静には、息子として喜久（1866年 - 1887年）と信一郎（1868年 - 1871年）がいましたが、二人とも早世してしまいました。

系譜

• - 父: 阿部正外
• - 正室: 通（須田津次郎の娘）
• - 継室: 幸（阿部正備の娘）のち離縁。
• - 子: 喜久、阿部信一郎
• - 義理の叔父: 阿部正功（阿部正耆の次男）

このように、阿部正静の短い生涯は、時代の激動の中での責任と試練に満ちあふれていました。江戸時代の幕末、江戸幕府の崩壊にかかわる中での彼の足跡は、当時の大名たちの中でも特異な存在感を放っています。

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