阿部興人

阿部興人について

阿部興人（あべ おきと、1845年10月5日 - 1920年1月2日）は、明治から大正にかけて活躍した日本の政治家および実業家です。彼は阿波国板野郡木津村（現在の徳島県鳴門市）に生まれ、幼少期は名主である父のもと、家庭のしつけを受けて育ちました。彼は阿部岸蔵の養嗣子として新たな道を歩み、柴秋邨の思済塾で学び、塾頭にまで昇進します。ここで彼は後の親友となる近藤廉平と出会い、互いに深い友情を育みました。

学生生活と初期のキャリア

1869年、阿部は外交御用に任命され、東京に上京しますが、すぐに故郷に戻りました。その後、1870年には長州藩での脱隊騒動の視察を命じられ、山口を訪れます。しかし、彼は徳島藩の家老による独立問題に巻き込まれ、終身禁固の判決を受けました。1873年に禁固が解かれた後は、徳島県庁に勤務し、美馬郡長や名西郡長、そして徳島県会議員を歴任しました。

北海道への進出

1881年には、兄の滝本五郎と共に徳島興産社を設立し、北海道開拓に乗り出しました。1882年には札幌郡篠路村に移住し、アメリカ式の農業を導入した興産社農場を設立、その社長に就任しました。彼の開拓活動によって、現在の札幌市北区拓北・あいの里の発展がもたらされました。「あいの里」という地名は、故郷阿波の藍染に由来しています。この開拓には、徳島藩旧藩主の蜂須賀茂韶らの支援を受け、多くの企業家や地主たちとのネットワークが重要な役割を果たしました。

政治活動と経営

1886年には大蔵省に転職し、地方財務課長や官有財産課長を歴任。その後は大阪府会計主計官や大阪市助役としても活躍しました。1890年には初の衆議院議員総選挙に立憲改進党から出馬して当選し、その後4回連続で当選、合計12年間衆議院議員を務めました。彼はまた、北海道の企業にも携わり、いくつかの重要なプロジェクトに関与しました。

函館での活動

1902年からは函館に移住し、企業家活動を本格化させます。1906年には渡島水電株式会社を創立し、社長となりました。しかし、経営の失敗によって困難に直面し、最終的には東京へと退きます。

晩年と遺産

1920年に大森の自宅で死去した阿部興人は、76歳という生涯を閉じました。彼の影響は北海道の開拓や日本の政治に多くの足跡を残し、独自のネットワークを通じて日本近代化に寄与しました。彼の養子には弟の子孫が続き、その後の日本社会や経済にも貢献しています。

著書

阿部興人は数冊の著作を残しており、特に『大日本帝國二十五期間財政始末』や『明治三庚午年阿部興人日誌』などが知られています。これらの著作は、彼の思想や経験を後世に伝える重要な資料とされています。

もう一度検索