陳和卿

陳和卿（ちん わけい / ちん なけい）

陳和卿は、生没年不詳の鎌倉時代に日本で活躍した南宋出身の工人です。東大寺の再建に大きく貢献したことで知られています。

人物・略歴

12世紀末、平安時代末期に日本へ渡来しました。治承4年（1180年）の東大寺焼失後、勧進上人である重源（ちょうげん）に協力し、焼失した東大寺大仏の鋳造と大仏殿の再建に尽力しました。

建久6年（1195年）3月13日、東大寺の再建供養式典が行われた際、源頼朝から面会を求められました。しかし、陳和卿は「頼朝は平家との戦いで多くの命を奪っており、罪深い人物であるため会いたくない」として面会を拒否しました。頼朝はその言葉に感銘を受け、奥州合戦で使用した甲冑・鞍、馬3頭、金銀を陳に贈りました。陳は甲冑を再建の釘として使い、鞍を寺に寄進しましたが、それ以外の品は全て頼朝に返しました。

東大寺再建の功績により、陳和卿は播磨国大部荘など5ヶ所の荘園を賜りましたが、それらを重源の大勧進職に寄進し、その経営に関与しました。しかし、東大寺の僧侶から、彼が材木を船の建造に流用して再建を妨害し、重源を裏切り寄進した荘園を再び自分のものにしようとしていると訴えられました。元久3年（1206年）4月15日、後鳥羽上皇より「宋人陳和卿濫妨停止下文」が出され、荘園と東大寺の再建事業から追放されました。

新井孝重によれば、この訴えは事実ではなく、外部の人間である重源や陳和卿が寺の再建を主導することに反発した東大寺の僧侶によるものであったとされています。

建保4年（1216年）6月8日、陳和卿は鎌倉へ赴き、「将軍は権化の再誕であり、拝謁したい」と第三代将軍源実朝への拝謁を希望しました。6月15日に実朝に謁見した際、実朝を三度拝み、泣き出しました。実朝はその行動に困惑しましたが、陳和卿は「あなたは昔、宋朝育王山の長老であった。その時、私は門弟であった」と述べました。これは、実朝が5年前に見た夢に出てきた高僧の言葉と同じであり、その夢を誰にも話していなかった実朝は、陳和卿を信用するようになりました。

同年11月24日、渡宋を計画した実朝の命により、大船の建造を開始しました。翌建保5年（1217年）4月17日に船は完成し、由比ヶ浜で曳航されましたが、海に浮かぶことはなく、砂浜で朽ち果てました。その後の陳和卿の消息は不明です。

作品

東大寺南大門狛犬

関連作品

小説
太宰治『右大臣実朝』（1943年）
テレビドラマ
『草燃える』（1979年、NHK大河ドラマ、演：草薙幸二郎）
『鎌倉殿の13人』（2022年、NHK大河ドラマ、演：テイ龍進）

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