陳懐

陳懐（ちん かい）

陳懐は、明代に活躍した軍人であり、その生涯は数々の戦乱と波乱に満ちていました。彼の功績と過ちを詳細に見ていきましょう。

生い立ちと初期のキャリア

陳懐の生年は不明ですが、本貫は廬州合肥県です。彼は父親の職を継ぎ、真定副千戸となります。その後、永楽帝の時代に軍功を重ね、都指揮僉事に昇進しました。1406年、永楽帝によるベトナム遠征に従軍し、都指揮使に昇進、山西都司の職を担いました。

ベトナムとチベットでの戦い

1409年、陳懐は張輔に従い、ベトナムの陳頠を討伐。翌1410年には、都督費瓛の指揮下で涼州の虎保の反乱鎮圧に貢献し、その名を上げました。1424年には、都指揮使として梁銘と共に寧夏に駐屯し、右軍都督同知に昇進しています。

松潘の反乱と陳懐の活躍

1426年、陳懐は征西将軍として任命され、寧夏参将を兼任。この時期、ベトナムでの明軍の敗戦が相次ぐ中、宣徳帝は松潘の軍をベトナムへ派遣しようとしましたが、松潘の将士たちは出征を拒否しました。千戸の銭宏らは、チベット系諸族が反乱を計画しているとの虚偽の報告を行い、兵を率いて麦匝の諸族を攻撃。この結果、諸族は実際に反乱を起こし、指揮の陳傑らを殺害し、松潘・畳渓を陥落させ、威州や茂州を包囲しました。明の西辺は騒然となり、宣徳帝は事態収拾のため、何敏や呉瑋を派遣しました。

1427年、陳懐は総兵官に任命され、松潘の反乱鎮圧を命じられました。劉昭、趙安、蔣貴らが率いる数万の軍勢を指揮し、呉瑋らと共に反乱軍と対峙しました。呉瑋らが松潘を奪回した後、陳懐は呉瑋を先鋒として畳渓を奪回、二十数寨を降伏させました。1428年、松潘の反乱は鎮圧され、陳懐は左都督に進み、多大な恩賞を授かりました。しかし、呉瑋の功績は記録されませんでした。その後、陳懐は四川に駐屯しましたが、民事に干渉し、賄賂を受け取り、屯田を侵奪するなど、数々の不正行為を行い、何度も弾劾を受けました。1430年、宣徳帝は陳懐を叱責しましたが、不問に付されました。

松潘での再度の反乱と失脚

1431年、松潘の勒都・北定の諸族や、空郎・龍渓のチベット系諸族が再び反乱を起こしました。陳懐は軍を派遣しますが敗北し、指揮の安寧ら三百人以上の死者を出す事態となりました。陳懐自ら出撃し、革児骨寨を破り、空郎乞児洞に進攻。多数の反乱軍を斬首しました。革児骨の反乱軍が苗族を集めて戦いを挑むと、陳懐はこれを撃破し、殲滅しました。その後、任昌・牛心諸寨が降伏し、松潘の反乱は鎮圧されました。しかし、1433年、巡按御史と按察使が陳懐の乱行を上奏。宣徳帝の怒りを買い、陳懐は召還され、審問の結果、死刑相当とされましたが、最終的に官職を罷免されるにとどまりました。

大同での活躍と最期

1437年、陳懐は総兵官として復帰し、大同に駐屯します。1439年には老齢のため北京に召還され、中府の事務を監理しました。1444年春、中官の但住と共に古北口に進出し、ウリャンカイを討伐。この功績により、平郷伯に封じられました。1449年6月、陳懐は京軍を率いて大同・宣府で練兵を行いました。同年7月、英宗の北征に従軍しましたが、8月に土木の変でオイラト軍に包囲され、戦死しました。彼の死後、平郷侯の位が追贈され、諡号は忠毅とされました。子の陳輔が平郷伯の爵位を継ぎました。

まとめ

陳懐は、明代の激動の時代を生き抜いた軍人であり、その生涯は多くの戦いと功績に彩られています。一方で、不正行為や失脚も経験するなど、その人物像は複雑です。彼の生涯は、当時の社会情勢や軍事情勢を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考資料

『明史』巻155 列伝第43

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