陳昕

陳昕（ちん きん）

陳昕（516年 - 548年）は、南朝梁の時代の武人であり、字を君章と名乗りました。彼は義興郡国山県を本貫としていました。

生涯

陳昕は、有名な武将である陳慶之の五男として生まれました。幼い頃から騎射の才能を示し、7歳にしてその腕前を発揮したと伝えられています。12歳の時には、父に従って入洛を目指しましたが、道中で病にかかり、都である建康へ帰ることとなりました。

建康に戻った陳昕は、鴻臚卿の朱异を訪ね、北方の情勢について質問を受けました。彼は、地面に土を集めて城の形を描き、指でなぞりながら詳細に説明し、朱异を大いに驚かせました。このエピソードは、彼の知略と才能を示すものとして語り継がれています。

大同4年（538年）、陳昕は邵陵王常侍・文徳主帥・右衛仗主に任じられ、義陽への援軍として派遣されました。父である陳慶之が懸瓠を包囲した際、北魏の豫州刺史である堯雄が援軍として現れ、その甥の堯宝楽が単騎で戦いを挑んできました。これに対し、陳昕は馬を躍らせて堯宝楽に突進し、打ち破りました。堯雄は敗走し、溱城は陥落しました。大同6年（540年）には、威遠将軍・小峴城主に任じられましたが、職務上の失敗により免官されました。

大同10年（544年）、王勤宗が巴山郡で反乱を起こすと、陳昕は宣猛将軍となり、仮節を受けて鎮圧にあたりました。王勤宗の乱を鎮圧した後、陰陵戍主・北譙郡太守に任じられましたが、病のため赴任することはありませんでした。その後、驃騎外兵に任じられ、まもなく臨川郡太守となりました。

太清2年（548年）、侯景が歴陽を包囲すると、陳昕に召還の命令が下りました。陳昕は采石の防衛の重要性を上奏し、雲騎将軍に任じられ、王質に代わって水軍を率いるように命じられました。しかし、采石に到着する前に、侯景はすでに長江を渡ってしまっていました。そこで陳昕は部下を率いて建康城外を遊弋しましたが、入城することはできませんでした。京口へ逃れようとしましたが、侯景に捕らえられてしまいました。

侯景は陳昕を任用しようとしましたが、陳昕は拒否しました。侯景が部下の范桃棒に陳昕を監禁させると、陳昕は范桃棒を説得し、王偉と宋子仙を殺害して投降する計画を立てました。范桃棒が建康城中に矢文を射こみ、陳昕を夜間に城内に入れました。蕭衍は喜んで降伏を受け入れようとしましたが、朱异や傅岐が謀略を疑って反対し、皇太子の蕭綱も決断できませんでした。そのうちに計画が侯景に漏れ、范桃棒は殺害されました。陳昕はそれを知らずに城を出て、侯景に捕らえられました。侯景は陳昕に新たな矢文を書かせて、それを利用して入城しようと企てましたが、陳昕は文書を書くことを拒否し、ついに侯景によって殺害されました。享年は33歳でした。

伝記資料

『梁書』巻32 列伝第26
『南史』巻61 列伝第51

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