陶貨

陶貨とは

陶貨（とうか）は、陶器を素材とした貨幣のことです。日本では、第二次世界大戦末期の金属不足を背景に、試作されましたが、実際に発行されることはありませんでした。ここでは、日本の陶貨を中心に、その歴史や背景、関連情報について詳しく解説します。

日本における陶貨

製造の背景

日本で陶貨が製造されるに至った背景には、日中戦争から太平洋戦争へと続く戦時下の金属資源の枯渇がありました。1938年（昭和13年）に制定された臨時通貨法により、政府は貨幣法によらない臨時補助貨幣を発行できるようになり、軍需物資としての金属需要が増加する中で、黄銅貨幣やアルミニウム貨幣などの代用貨幣が製造されました。しかし、戦局の悪化により、これらの金属も不足し、1944年（昭和19年）には陶貨の製造が計画されました。

試作から製造へ

陶貨の製造は、第一次世界大戦中のドイツでの事例を参考に企画されました。しかし、造幣局では陶貨の製造が困難であったため、1945年（昭和20年）4月には、京都市、愛知県瀬戸市、佐賀県有田町が製造地に選定され、各地の民間事業者が試作品を製造しました。同年7月には、工業化に成功し、1500万枚の陶貨が製造されましたが、発行には至らず、終戦とともに破砕・廃棄されました。2024年には、京都市東山区の当時の製造会社の倉庫から、約50万枚の1銭陶貨が発見されたことが、造幣局から発表されています。

陶貨の種類

試作された陶貨には、1銭、5銭、10銭の種類があったとされています。現存する陶貨は、博物館などで展示されており、その独特の質感やデザインを見ることができます。

陶貨の展示

陶貨は、いくつかの博物館や資料館で展示されています。

沖縄県平和祈念資料館：2021年の企画展で、1銭陶貨2枚が現物展示されました。
貨幣博物館（東京都）：常設展示場にて、1銭、5銭、10銭の陶貨が展示されています。また、タイで小銭として使用されていたとされる陶銭も展示されています。
造幣博物館（大阪府）：陶貨の展示があります。
有田町歴史民俗資料館（佐賀県）：陶貨の展示があります。
多治見市文化財保護センター（岐阜県）：陶貨の展示があります。

また、愛知県で行われた愛・地球博関連事業では、リサイクル陶磁器を利用した陶貨の復刻版がポイント交換品として提供されました。

陶貨を題材とした舞台作品

文学座『一銭陶貨〜七億分の一の奇跡〜』

文学座によって、陶貨を題材とした舞台作品が上演されました。この作品は、瀬戸で陶芸を営む家族が、陶貨の製造を依頼されるというストーリーです。作家の佃典彦が、NHKのドラマ企画のために構想したプロットを基に、文学座からのオファーで書き下ろしました。

公演情報

公演期間：2019年10月18日〜10月27日
場所：紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
作：佃典彦
演出：松本祐子
出演：鵜澤秀行、中村彰男、高橋ひろし、亀田佳明、奥田一平、奥山美代子、吉野実紗、平体まひろ

海外における陶貨等

ドイツの磁器通貨

第一次世界大戦後のドイツでは、ハイパーインフレーションが発生し、地域政府が発行したノートゲルト（地域通貨）の中に、陶製のものが存在しました。マイセン磁器製造所によって製造されたものが知られています。

タイの陶銭

1760年 – 1875年のタイ王国では、陶製の元カジノチップが通貨として流通していました。これは、マレーシアの華人の間でゲームチップとして使用されていたものが、通貨として転用されたものです。偽造が頻繁に行われたため、何度も改定が行われました。

旧満洲国のマグネ貨

第二次世界大戦末期には、旧満洲国において、金属製硬貨の代用として、軽焼マグネシアを原料とする五分マグネ貨及び一分マグネ貨が発行されました。

トリスタンダクーニャの記念陶貨

2018年には、トリスタンダクーニャから、ウェッジウッド製のジャスパーウェアで作られた5ポンド貨が3000枚限定で発行されました。これは、記念コインとしての陶貨発行の世界初の事例とされています。

まとめ

陶貨は、戦時下の資源不足という特殊な状況下で生まれた、歴史的な貨幣です。日本では発行されませんでしたが、その存在は、当時の社会情勢や技術を物語る貴重な遺物として、現代に伝えられています。展示されている場所もいくつかありますので、興味を持たれた方はぜひ足を運んでみてください。

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