陸軍野戦砲兵学校

陸軍野戦砲兵学校について

陸軍野戦砲兵学校は、旧日本陸軍において砲兵の育成を担った教育機関です。現在の千葉県四街道市にその跡地があり、かつては多くの砲兵将校や技術者を輩出しました。この学校は、砲兵戦術の進化とともに、その教育内容や組織を大きく変えてきました。

所在地と設立の背景

学校の所在地は、現在の四街道市中央・鹿渡地区周辺です。当初、この地には幹部候補生隊が置かれていました。1937年（昭和12年）の日中戦争勃発後、野戦重砲兵第四連隊が中国大陸へ移駐したことに伴い、その施設が学校として利用されるようになったと考えられています。

沿革

陸軍野戦砲兵学校の歴史は、1873年（明治6年）にフランスから教官を招き、旧佐倉藩の砲術練習所（下志津火業所）で砲術教育を開始したことに始まります。その後、数々の変遷を経て現在の形に至っています。

1886年（明治19年）4月2日：陸軍砲兵射的学校として創立。
1896年（明治29年）：陸軍野戦砲兵射撃学校と改称し、四街道駅北側へ移転。
1922年（大正11年）8月10日：陸軍野戦砲兵学校と改称、野戦重砲兵を含む教導聯隊を増設。高射砲練習隊を新設。
1933年（昭和8年）：情報・観測隊、下士官候補生隊、幹部候補生隊を創設。
1941年（昭和16年）：少年兵の生徒隊、ロケット弾を含む迫撃砲隊、自走砲隊などを新設。
1945年（昭和20年）：終戦を迎え解隊。

この変遷から、時代の変化と戦況に応じて、教育内容や組織が柔軟に変化していたことがわかります。特に、日中戦争や太平洋戦争（大東亜戦争）の影響が大きかったと言えるでしょう。

教育内容

学校では、甲種、乙種の学生教育の他、観測、通信、馭法、情報など、25種類以上もの専門分野を教育していました。砲兵の運用に必要な多岐にわたる知識と技術を習得できたことが伺えます。戦局の悪化に伴い、ロケット弾や自走砲といった新しい兵器に関する教育も行われるようになりました。

歴代校長

陸軍野戦砲兵学校は、その歴史の中で多くの校長を輩出しています。以下に、主な歴代校長を列挙します。

陸軍砲兵射的学校長
江間孚通 砲兵中佐：1886年5月3日 - 1888年5月21日
黒瀬義門 砲兵中佐：1888年5月30日 -
熊谷宣篤 砲兵中佐：1893年4月21日 - 1894年6月14日
伊藤祐義 砲兵中佐：1894年6月14日 -
出石猷彦 砲兵中佐：1895年8月8日 - 1896年5月15日

陸軍野戦砲兵射撃学校長
伊藤祐義 砲兵大佐：不詳 - 1897年10月11日
野間駉 砲兵大佐：1897年10月11日 - 1903年5月1日
松本鼎 砲兵大佐：1903年5月1日 -
木下宇三郎 砲兵大佐：1907年11月13日 - 1910年10月1日
河北栄太郎 砲兵大佐：1910年10月1日 - 1913年8月22日
長尾駿郎 砲兵大佐：1913年8月22日 - 1916年8月18日
渡辺満太郎 少将：1916年8月18日 - 1917年8月6日
小野寺重太郎 少将：1917年8月6日 -
磯村年 少将：1919年4月15日 -
波多野義彦 少将：1921年3月28日 -

野戦砲兵学校長
波多野義彦 少将：1922年9月6日 - 1923年8月6日
金山久松 少将：1923年8月6日 - 1926年3月2日
原口初太郎 中将：1926年3月2日 -
室兼次 少将：1927年7月26日 -
西義一 中将：1930年8月1日 -
入江仁六郎 少将：1931年8月1日 -
伊東政喜 少将：1933年8月1日 -
山室宗武 少将：1934年8月1日 - 1936年3月23日
井関隆昌 少将：1936年3月23日 -
広野太吉 少将：1937年8月14日 -
前田治 少将：1938年7月15日 -
井関仭 少将：1939年3月9日 -
佐野忠義 少将：1940年8月1日 -
重田徳松 少将：1941年6月20日 -
池田浚吉 少将：1942年3月2日 -
欠員：1944年3月4日 - 8月22日
* 橋本博光 少将：1944年8月22日 - 閉校

これらの校長たちは、それぞれの時代において、学校の運営や教育方針に大きな影響を与えました。彼らの指導のもと、多くの優秀な砲兵将校や技術者が育成されたのです。

教官と著名な出身者

学校には、ジョルジュ・ルボン（フランス軍砲兵大尉）など、海外からの教官もいました。また、木村兵太郎、吉田豊彦、中島今朝吾、高村武人など、後に陸軍で重要な役割を担う人物も教官として在籍しています。

著名な出身者としては、北白川宮永久王、盛厚王といった皇族がいます。これらの人物が、学校の教育内容の質の高さを物語っています。

現在の状況

現在、学校の跡地には、四街道市役所の西側に石碑が建てられています。この石碑は、かつての陸軍野戦砲兵学校の存在を今に伝える貴重な遺構となっています。

まとめ

陸軍野戦砲兵学校は、旧日本陸軍の砲兵教育の中核を担った重要な機関でした。その教育内容は、時代の変化とともに柔軟に変化し、多くの砲兵将校や技術者を育成しました。学校の歴史は、日本の軍事史における重要な一部であり、その存在は今日の四街道市にもその名残を留めています。

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