隈取磁極型誘導電動機

隈取磁極型誘導電動機の仕組みと特徴

隈取磁極型誘導電動機は、単相交流電源で駆動する誘導電動機の一種です。他の呼び方として、くま取りコイルモータ、くま取り巻線形電動機、隈取線輪型誘導電動機などがあります。その名の通り、歌舞伎役者の隈取化粧のように、磁極の一部に影を作ることで回転を始めるユニークな仕組みを持っています。

回転磁界の生成

この電動機の心臓部は、ステータ（固定子）に巻かれた短絡コイル（隈取コイル）です。単相交流電源では、回転磁界を直接生成することができません。そこで、この隈取コイルが重要な役割を果たします。

ステータの磁極の一部に隈取コイルを配置することで、その部分の磁束の発生が遅れます。この遅れによって、磁極間に位相差が生じ、結果的に回転磁界を発生させることができるのです。この回転磁界によって、ロータ（回転子）が回転を始めます。

始動と回転

一度始動すると、2極型の直流整流子電動機と同様に回転を続けます。隈取コイルは、始動トルクを得るための重要な要素であり、回転の維持にも貢献しています。

逆転機能

隈取コイルを90°ずらして2対設置し、回路を開いた状態にしておくことで、どちらかのコイルを短絡させることで回転方向を逆転させることができます。ただし、これは設計段階での対応であり、既存のモーターを容易に逆回転させることはできません。

構造とコスト

隈取磁極型誘導電動機の大きな利点は、そのシンプルな構造と安価な製造コストです。単相誘導電動機としては非常に構造が単純なため、大量生産にも適しています。しかし、効率は他の電動機と比較して低いという欠点があります。

用途

効率がやや低いことから、負荷の軽い用途に限定されます。代表的な用途としては、冷却ファン、小型の送風機などが挙げられます。特に安価な交流モーターが必要とされる扇風機などによく利用されています。

スケルトンモータ

ステータとロータがハウジングに収められておらず露出しているタイプの隈取磁極型誘導電動機は、「スケルトンモータ」と呼ばれることもあります。これは、特に安価な交流モーターとして、扇風機などに使用されています。

まとめ

隈取磁極型誘導電動機は、そのユニークな構造と安価さから、特定の用途において重要な役割を果たしています。シンプルな構造ながら、回転磁界を巧みに利用することで、始動と回転を可能にしている点が技術的に興味深い点です。しかし、効率の低さから、より高効率なモーターが必要とされる用途には適していません。今後、より効率的な設計や材料の開発が進めば、適用範囲の拡大も期待できるでしょう。

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