隈部親永

隈部親永（くまべ ちかなが）とは

隈部親永は、戦国時代の肥後国（現在の熊本県）で活躍した武将です。隈部氏の28代当主とされていますが、詳しい出自については不明な点が多く残されています。肥後国山鹿郡の永野城を拠点とし、当初は大友氏に従っていましたが、後に龍造寺氏と結び、さらに豊臣秀吉に反旗を翻すなど、激動の時代を象徴する人物の一人です。

大友氏からの離反と龍造寺氏との同盟

当時の肥後北部は、大友氏の支配下にあり、隈部氏もその一翼を担っていました。しかし、隈部親永は同じく大友氏に従っていた赤星氏との対立を深めます。領土問題や主導権争いが原因で、永禄2年（1559年）には合勢川の戦いで赤星親家を破りました。しかし、赤星氏が大友氏に援軍を要請したため、親永はこれに対抗して肥前国の龍造寺隆信と同盟を結びます。天正6年（1578年）の耳川の戦いで大友氏が島津氏に大敗すると、親永は龍造寺氏の肥後侵攻に加担し、大友氏との関係を完全に断ち切りました。

龍造寺氏との共同戦線と勢力拡大

龍造寺氏と同盟した親永は、肥後北部での勢力拡大を目指します。天正8年（1580年）には、龍造寺勢と共同で赤星氏の拠る長坂城を攻略し、さらに赤星氏の本拠地である隈府城も手に入れました。この頃、親永は本拠を永野城から隈府城に移し、さらに子の隈部親泰を城村城に入れています。所領は菊池・山鹿・山本の三郡にまで及び、菊池氏の旧臣たちと婚姻関係を結び、勢力を拡大していきました。しかし、天正12年（1584年）の沖田畷の戦いで龍造寺隆信が戦死すると、龍造寺氏の勢力は衰退し、肥後北部には島津氏が侵攻してきます。親永は島津氏に降伏し、一時的にその傘下に入りました。

豊臣秀吉への抵抗と最期

天正15年（1587年）、豊臣秀吉が九州征伐を開始すると、親永は他の肥後国人たちと同様に秀吉に恭順します。しかし、所領は大幅に減らされ、佐々成政が肥後一国の領主となると、その与力に組み込まれることになりました。成政が検地を実施しようとすると、親永はこれを領知権の侵害として拒否し、隈府城に籠城します。この行動が他の国人たちの反発を呼び、肥後国人一揆へと発展しました。

親永は、城村城に拠って抵抗を続けましたが、豊臣秀吉は九州・四国の大名を動員して一揆勢を鎮圧します。安国寺恵瓊の勧めで城村城を開け渡し、降伏した親永は、筑後国の立花宗茂に預けられ、側近と共に柳川城黒門前で放し討ちにされました。この処刑は、秀吉に反抗した国人たちの末路を象徴する出来事として語り継がれています。

隈部親永の評価と銅像

隈部親永は、その波乱に満ちた生涯から、さまざまな評価を受けています。熊本県の無形文化財である肥後琵琶の演目「菊池崩れ」では、菊池氏に対する不忠不義の臣として描かれています。しかし、地元では、戦国時代の激動を生き抜いた武将として、その功績を讃える声も少なくありません。

山鹿市菊鹿町には、親永の居城であった永野城跡があり、国指定史跡となっています。これを記念して、山鹿市には親永の銅像が建立され、現在もその姿を見ることができます。この銅像は、地元の人々にとって、親永の勇猛果敢な姿を偲ぶシンボルとなっています。

まとめ

隈部親永は、戦国時代の肥後国を代表する武将の一人です。大友氏、龍造寺氏、豊臣秀吉と、時代の権力者たちとの間で揺れ動き、その生涯は、まさに戦国乱世を体現しています。彼の行動は、当時の国人たちの複雑な立場や、激しい勢力争いを浮き彫りにするものであり、肥後の歴史を語る上で欠かせない重要な人物と言えるでしょう。

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