隠山惟琰

隠山惟琰（いんざん いえん）は、1751年（宝暦元年）に生まれ、1814年（文化11年）に没した江戸時代後期の臨済宗の僧です。妙心寺派に属し、峨山慈棹の法を継ぎ、白隠慧鶴の法孫にあたります。彼は、卓洲胡僊と並び、現代の臨済禅における二つの主要な法系、すなわち隠山系の祖として知られています。その禅風は、峻厳であると評されています。

生涯

越前国大野郡石徹白村（現在の岐阜県郡上市）で、白山神社の宮司の子として生を受けました。1759年（宝暦9年）に、美濃国洞戸興徳寺（現在の岐阜県関市）の住持であった老山辨愚のもとで出家しました。その後、1769年（明和3年）には岐阜の瑞昌寺に移り、3年間修行に励みました。その後、各地を遊行し、1772年（明和6年）には武蔵国宝林寺の月船禅慧のもとで学びました。1776年（安永5年）には西国を行脚した後、1781年（天明元年）に老山辨愚が開山した洞戸梅泉寺の住持となりました。その後、江戸に上り、峨山慈棹から白隠禅の薫陶を受け、39歳で大悟に至りました。1792年（寛政4年）には印可を受けました。

その後、峨山慈棹に従い、清泰寺（岐阜県美濃市）や梅龍寺（岐阜県関市）などを転々としました。峨山慈棹の下を離れてからは、梅泉寺と梅龍寺の住持を務め、堅相寺（岐阜県山県市）を再建し、後進の指導に当たりました。

1804年（文化元年）には播磨国松源寺に隠棲しましたが、1806年（文化3年）に瑞龍寺（岐阜県岐阜市）に入り、その再建に尽力しました。1808年（文化5年）には紫衣の勅許を得て、翌年には妙心寺開山関山慧玄の450年遠忌の導師を務めました。1811年（文化8年）に、瑞龍寺鶴棲院にて遷化しました。墓所も同寺にあります。正灯円照禅師と諡されました。著書には『隠山録』や『正灯円照禅師偈頌』があります。

隠山惟琰には多くの法嗣がいますが、中でも太原孜元、棠林宗寿、雪関紹珠、そして顧鑑古范の4人は特に「隠山下四哲」と呼ばれています。彼らは、隠山の禅の教えを深く理解し、後世に伝えた重要な人物です。

隠山惟琰は、その厳格な禅風と、多くの優れた弟子を育てたことで、臨済禅の歴史において重要な役割を果たしました。彼の教えは、現代の臨済禅にも大きな影響を与え続けています。

参考文献

『新版禅学大辞典』
『妙心寺 650年の歩み』

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