雅成親王

雅成親王（まさなりしんのう）

雅成親王は、鎌倉時代初期に生きた皇族であり、歌人としても知られています。後鳥羽天皇の皇子として生まれ、波乱に満ちた生涯を送りました。

生涯

正治2年（1200年）に後鳥羽天皇の皇子として誕生。母は修明門院で、後に宣陽門院の養子となります。同母兄には順徳天皇がいます。建仁4年（1204年）に親王宣下を受け、建暦2年（1212年）に元服して三品親王となりました。翌年には久我通光の娘と結婚しています。

源実朝が暗殺された後、鎌倉幕府から次期将軍として迎えたいという要請がありましたが、後鳥羽上皇に拒否されました。承久3年（1221年）の承久の乱では、父である後鳥羽上皇に加担したため、但馬国へ流刑となり、城崎郡高屋（現在の兵庫県豊岡市）に幽閉されました。嘉禄2年（1226年）に出家しています。

寛元3年（1245年）には、平経高が「六条宮」を訪ねて「密事等」を行ったとされています。これは皇位簒奪の謀議ではないかとも推測されています。翌寛元4年（1246年）の宮騒動では、修明門院の支援者であった九条道家・頼経親子が失脚。彼らが北条得宗家の転覆と六条宮の即位を企てたとされています。雅成親王がこの「六条宮」であったとする説もありますが、真相は定かではありません。

文化的な功績

雅成親王は歌人としても才能を発揮し、新三十六歌仙の一人に数えられています。家集として『雅成親王集』があり、『続後撰和歌集』などの勅撰和歌集にも歌が収録されています。また、法然上人とも親交があり、『法然上人絵伝』には「但馬宮」として登場しています。

但馬での悲話

雅成親王が但馬に流刑となった後、親王の妃は身重の体で、女官を伴い但馬へと向かいました。しかし、高屋へたどり着く手前で、地元の老婆に道を尋ねたところ、「九日かかる九日市、十日かかる豊岡、人をとる一日市と、あと20日かかる」という嘘を教えられました。嘆き悲しんだ妃は、生まれたばかりの子を石の上に寝かせ、女官と共に自ら命を絶ったと伝えられています。

妃を弔うために建てられたのが、豊岡市日高町松岡にある十二所神社です。ここでは毎年4月14日に、嘘をついた老婆を模した人形を焼く「御柱祭」（通称：ババ焼）が行われています。また、豊岡市城崎町湯島には、女官の遺髪を祀る若上臈稲荷大明神があります。

雅成親王の生涯は、皇族としての宿命、政治的な動乱、そして悲劇的な伝説に彩られています。その歌人としての才能は、後世にも高く評価されており、日本の文化史にその名を刻んでいます。

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