雲ケ畑

雲ケ畑（くもがはた）

京都市北区の最北端、鴨川（賀茂川）の源流域に位置する山間地域です。かつては愛宕郡雲ケ畑村として独立していましたが、現在は京都市北区の一部となっています。

概要

雲ケ畑は、京都市北区の北東部に広がり、右京区や左京区と隣接しています。かつての出谷村、中畑村、中津川村を合わせた約19.5平方キロメートルの面積を有します。地域は山深い地形が特徴で、北区最高峰の桟敷ヶ岳をはじめとする山々が連なり、豊かな自然景観はハイキング客など多くの人々を惹きつけています。

歴史

賀茂川の源流域として、雲ケ畑は古くから朝廷との結びつきが強い地域でした。平安京造営への木材供給をはじめ、主殿寮や仙洞御料（上皇の所領）として木材や鮎などを献上する役割を担いました。

平安時代には、皇位継承から遠ざけられた惟喬親王がこの地に隠棲し、出家したと伝えられています。親王は地域住民に慕われ、その生涯にまつわる多くの伝説が残されています。

地理と行政区画

雲ケ畑は、かつて若狭国へ通じる鯖街道の一部であり、京都と丹波国を結ぶ交通路としても利用されました。近代では、1874年（明治7年）に三つの村が合併して愛宕郡雲ケ畑村となり、その後、1949年（昭和24年）に京都市に編入され、1955年（昭和30年）からは新設された北区の一部となりました。

公共交通は、長らく京都バスが運行していましたが、2012年（平成24年）に撤退し、現在は地域住民が運営する「雲ケ畑バス もくもく号」が代替として運行されています。

林業

古くから林業が行われ、薪炭生産を中心として天然林が守られてきました。大正期には協同組合が設立され、計画的な造林が始まりました。現在も林業は地域産業の一つであり、雲ケ畑林業総合センターがその活動拠点となっています。

名前の由来

地名「雲ケ畑」の由来には複数の説があり、薬草の花の香りが紫雲のようだったという伝承や、古くこの地を開いたとされる氏族に関連するという説などがあります。

賀茂川の水源地として

雲ケ畑は京都市民の生活を支える賀茂川の重要な水源地です。古くから住民は水質保全に努め、厳しい配慮のもと生活してきました。地域の森林の多くは水源かん養保安林に指定されています。しかし、近年では産業廃棄物に関連する問題も指摘されています。

名所・旧跡

九龍山高雲寺：惟喬親王ゆかりの真言宗寺院です。
厳島神社：水源を護る神として信仰される古社です。
惟喬神社：惟喬親王を祀る神社です。
岩屋山志明院：「岩屋不動」として知られ、賀茂川の治水祈願のために空海が開創したと伝わる寺院です。
* 雲ケ畑林業総合センター：林業振興や地域交流の拠点です。

名物・地域活動

雲ケ畑松上げは、8月24日に行われる火祭りです。惟喬親王供養に始まり、現在は火除けなどを祈願する行事として京都市登録無形民俗文化財となっています。地域内には特別天然記念物のオオサンショウウオが生息し、これにちなんだ「大山椒魚まんじゅう」も作られています。住民は高齢者向け健康教室や地域活性化委員会などを通じて、地域の維持・活性化に積極的に取り組んでいます。

将来への課題

雲ケ畑地域は、人口減少と高齢化が深刻化しています。生活に必要な施設や商業施設が不足し、市街化調整区域であることなどから、若い世代の転出が進み、新たな住民の確保が難しい状況です。地域の小中学校は児童生徒数の減少により休校となりました。林業の衰退も進み、山林荒廃や水資源への悪影響が懸念されており、持続可能な地域運営が大きな課題となっています。

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