主殿寮

主殿寮：律令制を支えた宮廷の管理機関

主殿寮は、古代日本の律令制において宮内省に属した重要な機関です。内裏、すなわち天皇の宮廷における運営を支える役割を担っていました。その職務は、主に宮廷内で使用される消耗品の管理と供給でした。文房具や生活用品といった日用品から、儀式に必要な道具まで、幅広い品目を管理下に置いていたと考えられます。

多岐にわたる業務と組織

主殿寮の業務は、想像以上に多岐にわたりました。内裏の施設管理も重要な業務の一つであり、そのため、駆使丁や今良といった多数の職員が配置されていました。この点は、同様の業務を担っていた掃部寮と重複する部分もありました。

特に注目すべきは、808年（大同3年）の官奴司との合併です。これにより、主殿寮は官奴婢や官戸（官に属する奴隷身分の人々）の管理も行うようになり、その権限と業務範囲は大きく拡大しました。

主殿寮と同様の機関は、他の宮廷組織にも存在しました。例えば、皇太子の住む春宮坊には主殿署、皇后の住む後宮には殿司、斎宮（天皇の女系親族が祀る神に仕える巫女）の斎宮寮には殿部司といった、それぞれ類似した役割を担う部署がありました。

主殿寮の名称は、「とのも」という語に由来すると考えられています。「とのも」とは「御殿（との）」の管理を職務とする主殿守（とのもり）から派生した言葉だと推測されています。御殿とは天皇の住む宮殿のことですから、主殿寮の職務内容を端的に示していると言えるでしょう。

人員構成と職階

主殿寮は、様々な職階の人員によって構成されていました。長官である頭（かしら）は従五位下相当の位階にありました。その下に助（すけ）、允（みこと）、大属（おおぞく）、少属（しょうぞく）といった役職が置かれ、それぞれ従六位上、従七位上、従八位下、大初位上相当の位階に位置づけられていました。

さらに、殿部、使部、直丁、駆使丁といった多くの職員が、消耗品の管理・維持、雑役など、様々な業務に従事していました。殿部は、調度品や消耗品の管理・維持を担当する重要な部署で、古くは特定の氏族から職員が採用されることもありました。

世襲と歴史

主殿寮の長官職は、後に小槻氏が世襲するようになりました。これは、平安時代における特定氏族による官職の世襲という、当時の社会構造を反映した現象と言えるでしょう。小槻氏による主殿寮の長官職の世襲は、主殿寮の歴史を考える上で重要なポイントの一つです。

主殿寮は、内裏の運営に不可欠な機関として、平安時代初期までその役割を果たしました。その歴史と組織構造、そして多様な業務内容は、古代日本の政治と社会を知る上で貴重な資料となっています。

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