雲光院 (江東区)

雲光院：徳川家康ゆかりの寺院の歴史と魅力

東京都江東区清澄白河に位置する雲光院は、浄土宗に属する由緒ある寺院です。その歴史は、徳川家康の側室として知られる阿茶局（雲光院殿従一位尼公正誉周栄大姉）にまで遡ります。

慶長16年（1611年）、阿茶局によって開基された雲光院は、当初は日本橋馬喰町にありました。しかし、度重なる火災などの災厄に見舞われ、移転を繰り返すことになります。そして、天和3年（1683年）、現在の清澄白河の地へと落ち着いたのです。

東照大権現・徳川家康の側室ゆかりの寺院という特別な立場から、雲光院は幕府の庇護を受け、多くの塔頭を擁する大寺院として栄えました。境内は賑わい、多くの信徒や参拝客で活気に満ちていたことでしょう。

しかし、明治時代に入ると、幕府の庇護を失った雲光院は大きな変化を経験します。傘下の塔頭寺院は、独立したり、雲光院に吸収合併されたりしました。これは、明治維新による社会構造の激変が寺院にも影響を与えたことを示しています。かつての隆盛は影を潜め、雲光院は新たな道を歩む必要に迫られたのです。

現在、雲光院には多くの著名人の墓所が残されています。開基である阿茶局をはじめ、旗本の後藤三右衛門、中坊秀祐、吉原遊郭の開設者である庄司甚右衛門、そして浄瑠璃の大夫、初代竹本越路大夫とその子である三代目野澤吉兵衛など、歴史に名を残す人々が眠っています。彼らの墓石は、静かに時の流れを見つめ続けているかのようです。

これらの墓所は、雲光院の歴史だけでなく、江戸時代の社会や文化を知る上で貴重な史料となっています。それぞれの墓石に刻まれた物語を想像しながら境内を散策すると、歴史の重みと奥深さを実感できるでしょう。

静寂に包まれた境内は、現代の喧騒を忘れさせてくれる癒やしの空間です。歴史と伝統を肌で感じながら、静かに瞑想するひとときを過ごすことができるでしょう。

交通アクセスは、東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口から徒歩4分と便利です。週末の散歩コースに、あるいは歴史散策の一環として、訪れてみてはいかがでしょうか。雲光院の歴史と雰囲気に浸り、江戸時代の息吹を感じることができるはずです。

参考文献:

細田隆善 著『江東区史跡散歩 (東京史跡ガイド8)』学生社、1992年

関連情報:

浄土宗龍徳山雲光院（公式ホームページ）

もう一度検索