雲照寺 (渋谷区)

雲照寺：歴史と静寂が織りなす渋谷の寺院

東京都渋谷区に佇む雲照寺は、東寺真言宗に属する寺院です。代々木上原駅から徒歩5分というアクセス抜群の立地ながら、境内は静寂に包まれ、都会の喧騒を忘れさせてくれる癒やしの空間となっています。

雲照寺の創建年代は残念ながら明らかになっていません。元々は現在の文京区目白台に所在し、「蔵王寺」という名前で知られていました。現在の姿へと至るまでには、幾多の歴史的変遷が重ねられています。

明治時代、真言宗の僧侶であった釈雲照は、目白台に「目白僧園」という学校を開きました。釈雲照の没後、その教えを慕う卒業生たちが、師の功績を称え、1921年（大正10年）に蔵王寺を現在の渋谷区に移転。同時に、釈雲照の名に因んで寺名を「雲照寺」と改めました。

移転に際しては、目白台の旧蔵王寺から観音堂と門が、そして鳥尾小弥太子爵邸から庫裏などが移設されました。境内にある鐘は、古都奈良の興福寺の鐘を模して東京藝術大学で制作されたという逸話も持ち合わせています。これらの建造物は、それぞれ異なる歴史を背負いながら、雲照寺の歴史を静かに物語っています。

かつての「目白僧園」は後に寺院登録され、練馬区へと移転。現在は十善戒寺として存在しています。雲照寺と目白僧園、そして十善戒寺のつながりは、明治から現代へと続く、仏教の教えと人々の信仰心の歴史を物語っています。

雲照寺の境内には、古い板碑も残されています。その建立年代は不明な点も多いですが、雲照寺の歴史、ひいては地域の歴史を紐解く上で貴重な手がかりとなる存在です。風雨に晒されながらも、静かに時を刻む板碑は、来訪者に静かな感動を与えてくれます。

雲照寺は、創建から移転、改称、そして現在に至るまで、数々の出来事を経てきました。その歴史は、単なる寺院の歴史にとどまらず、明治時代の教育、信仰、そして人々の深い繋がりを反映しています。静寂に包まれた境内には、歴史の重みと、人々の信仰の深さが感じられます。代々木上原を訪れた際は、ぜひ雲照寺に足を運んで、その歴史と静寂に包まれた空間を体感してみてください。

交通アクセス:

代々木上原駅より徒歩5分

参考文献:

林陸朗ほか著、東京にふる里をつくる会編『渋谷区の歴史 (東京ふる里文庫11)』名著出版、1978年
佐藤昇 著『渋谷区史跡散歩 (東京史跡ガイド13)』学生社、1992年

関連項目:

* 釈雲照

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