零式輸送機

零式輸送機（れいしきゆそうき）

零式輸送機は、太平洋戦争中に使用された日本海軍の主力輸送機であり、その設計はアメリカの旅客機ダグラス DC-3を基にしています。この機体は、海軍による呼称ではL2Dとされ、連合軍側では「Tabby」として知られていました。日本海軍のパイロットの間では、「ダグラス機」という愛称でも親しまれていました。

採用の背景

日本海軍は、従来の輸送任務に九七式飛行艇を利用していましたが、日中戦争の展開に伴い、本格的な陸上輸送機の必要性が高まりました。1936年にアメリカで就航したダグラス DC-3は、その優れた性能を元に多くの航空会社に採用され、輸送能力が際立っていました。これを受けて、日本は三井物産を介して1937年に製造権を取得し、昭和飛行機工業に生産を委託しました。

製造の進展

昭和飛行機は、ダグラス社との技術提携を行い、零式輸送機の製造を開始しましたが、設立されたばかりの企業のため、技術者や経験の不足に苦しむこととなりました。初号機の設計は1938年8月から始まり、1939年9月に完成しました。しかし、ヤード・ポンド法からメートル法への換算に手間取ったため、最初の5機の完成は1941年5月となりました。初号機を含む4機は大日本航空に旅客機として納入され、残る2機は日本海軍に引き渡されました。

一一型（L2D2）

1941年7月に完成した一一型は、エンジンをオリジナルのライト・サイクロンから三菱製金星四三型に変更し、各種の改修が施されました。また、航法と通信を担当する席も追加され、同年12月にD2号輸送機として制式採用されました。この型は最終的に零式輸送機一一型と改名され、71機が製造されました。

二二型（L2D3）

1942年には独自の改良が行われ、二二型（L2D3）が登場しました。この型はエンジンを1300馬力に換装し、機体の補強や内装の簡略化を行いました。また、側面と上面に旋回機銃を装備した二二甲型（L2D3a）も開発されました。

二三型（L2D4）

二二型の後、エンジンをより強力な1500hpの金星六二型に換装した二三型（L2D4）が試作されました。

三三型（L2D5）

この段階で、二三型は今度は全木製化される計画が立てられましたが、これも試作にとどまりました。

DC-3輸送機

大日本帝国陸軍の要望に応じて製作された陸軍型もあり、海軍から提供された機体を基に立川飛行機で改修され、約20機が生産されました。

生産の詳細

生産された零式輸送機の数に関しては資料によって異なります。一一型は71機とされている一方、昭和製についての資料では約430機から416機とする異なる情報が存在します。

性能諸元

• - 全長: 19.705 m
• - 全幅: 28.964 m
• - 全高: 7.400 m
• - 主翼面積: 91.7 m²
• - 自重: 7,540 kg
• - 全備重量: 12,500 kg
• - エンジン: 三菱「金星」五三型 × 2基（離昇出力 1,300 hp）
• - 最大速度: 393 km/h
• - 巡航速度: 278 km/h
• - 着陸速度: 125 km/h
• - 航続距離: 3,270 km
• - 上昇限度: 7,280 m
• - 武装: 7.9mm旋回機銃 × 1、7.9mmまたは13mm機銃 × 3
• - 乗員/乗客: 5 / 21 （貨物型は乗員 11）

このように、零式輸送機は日本海軍の輸送機として重要な役割を果たすことになり、その性能や改良の歴史は航空機の進化を物語っています。

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