霞町 (東京都港区)

霞町（かすみちょう）

霞町は、かつて東京都港区の麻布地区に存在した町名で、1967年まで使用されていました。現在の住所で言うと、港区西麻布の一丁目から三丁目、さらに六本木六丁目と七丁目の一部にあたります。このエリアは、外苑西通りと六本木通りが交わる西麻布交差点を中心に広がっています。商業施設が立ち並ぶ幹線道路沿いと裏手の高台には、カトリック麻布教会やみこころ幼稚園、さらには数々の住宅も見られるなど、多様な顔を持つ地域です。

江戸時代、この周辺は武家地であり、町名の由来は、この地域の氏神である霞山稲荷、つまり現在の桜田神社に由来しています。霞町は明治政府が阿部播磨守の広大な下屋敷の一部を官収した後に形成されました。町が開かれた際には、隣接する桜田町が「桜田神社」に由来して名付けられたため、霞町では「霞山」の「霞」を取り入れた名称になりました。

昭和初期、東京都電車が運行されていた時代、霞町は西麻布交差点に存在した路面電車の停留場としても知られていました。ここでは二つの路線が交差しており、坂が多い地形から、行き来する電車の様子が興味深く見られました。

霞坂

霞町の中心部には霞坂があり、西麻布一丁目と三丁目の間を南西に向かって下る坂道です。現在の地形では、首都高速3号渋谷線の高架下を通る六本木通りが霞坂になります。谷底にあたる西麻布交差点から六本木通りに上る坂は笄坂と呼ばれています。1942年に出版された『麻布区史』では、霞坂が「霞町電車通りの坂」として紹介されており、途中には日蓮宗の仏堂も存在していました。

出身・ゆかりのある人物

霞町は多くの著名人にゆかりがある場所でもあります。例えば、阿部正功子爵（元棚倉藩主）は1番地に邸を構えていました。その他にも、織田長純子爵（旧芝村藩主）が6番地に、大久保教尚子爵（元荻野山中藩主）が19番地に住んでいました。また、手塚猛昌や伊東義五郎、石橋甫など、歴史に名を刻む人物もこの地に住んでいました。さらに、タレントのデヴィ・スカルノは、父親が地元の大工であったため霞町にゆかりがあります。

霞町の多様な歴史や文化は、当時の社会の縮図と言えるでしょう。現在は都市化が進み、様々な商業施設やコミュニティが共存する場所へと変わりつつありますが、かつての霞町の面影を感じさせる要素は今も残っています。

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