露土戦争 (1787年-1791年)

露土戦争（1787〜1792年）

露土戦争は、1787年8月から1791年12月（グレゴリオ暦1792年1月）まで、ロシア帝国とオスマン帝国の間で繰り広げられた戦争です。一般的には「第二次露土戦争」と呼ばれますが、過去には数回にわたるロシアとオスマンの戦闘があったため、「第六次」と称されることもあります。この戦争の結果、ロシアはオスマン帝国に対して顕著な優位を確立し、その後のバルカン半島への進出を加速させました。戦争はロシアの勝利に終わり、1791年12月にはモルダヴィアのヤッシーで講和が結ばれました。

戦争の背景とプロセス

ロシア帝国は、1768年から1774年にかけてオスマン帝国との戦争を経て、クチュク・カイナルジ条約を締結し黒海沿岸への進出を果たします。条約により、クリミア・ハン国に対するオスマンの宗主権は否定され、ロシアは黒海での艦隊建造権と商船の自由航行権を獲得しました。これはロシアの南下政策を助長するものであり、同時に「東方問題」という新しい問題を引き起こすことになります。

ロシアは、女帝エカチェリーナ2世のもと、黒海北岸の開拓を加速し、愛人であるグリゴリー・ポチョムキンが中心的役割を果たしました。エカチェリーナは、1782年にバルカン半島の分割を目的とする「ギリシア計画」を推進し、1783年にクリミアの併合に踏み切ります。この併合後には、クリミアにタヴリダ県が設置され、ロシアの南下政策を強固なものとしました。

1787年、オスマン帝国からの反発が高まり、ロシアとの講和に失敗したことからオスマンはロシアに宣戦布告を行います。この時期には、オーストリアもオスマン領に侵攻するなど、緊張が高まりました。戦争が始まると、ロシアのアレクサンドル・スヴォーロフ将軍は陸上と海上においてオスマン軍に対して圧倒的に有利な戦局を維持します。

戦闘の展開

開始から数年の間に、ロシア軍はオチャーコフの攻囲戦を含む数々の戦闘で勝利を収め、特に1788年のウージーの攻撃はオスマン帝国にとって大きな痛手でした。1789年には、スヴォーロフがオスマン軍に勝利し、イズマイル要塞を攻撃して成功を収めます。この戦争にはオスマン側の無能な指導力と士気の低下が負の要因となり、ロシアの連勝を助けました。

黒海の制海権はロシアのものとなり、オスマンは海上での影響力を失いました。ロシアは、クリミアの併合に加え、多くの新しい港町を次々と設立し、黒海沿岸の経済発展が進みました。

ヤッシーの講和とその影響

露暦1791年、講和条約がヤッシーで結ばれ、クリミアのロシアによる併合が正式に承認されました。この結果、ロシアの領土は拡大し、オスマンの影響力は大幅に削減されました。黒海におけるロシアの商業活動は急速に成長し、新たな貿易都市も生まれていきました。特にオデッサは、この時期に栄えた都市の一つであり、19世紀にはヨーロッパ最大の穀物輸出港として発展しました。

この戦争は、ロシアとオスマンの力関係を明確に変化させ、ロシアのバルカン半島進出を促しただけでなく、後の帝国主義的な動きの基盤ともなりました。これにより、ロシアはオスマン帝国の支配下にある民族の独立要求を利用し、政治的影響を強めていくことになります。その影響は19世紀後半においても続き、ロシアと西欧諸国との関係に影響を及ぼすこととなるのです。

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