青の洞門

青の洞門：耶馬渓のシンボル、歴史と自然が織りなす絶景

大分県中津市耶馬渓にある青の洞門は、雄大な自然と歴史が融合した、魅力的な観光スポットです。山国川沿いの断崖に位置する全長約342mの洞門は、その独特の景観から、耶馬渓を代表する景勝地として多くの人々を魅了しています。

禅海和尚の偉業と30年の歳月

青の洞門の歴史は、江戸時代中期の1730年頃、曹洞宗の僧侶・禅海和尚の誓願から始まりました。当時、危険な桟橋を利用していた人々を救済するため、和尚は陸路の開削を決意。豊前国中津藩主の許可を得て、周辺住民や九州各地の領主らの協力を得ながら、約30年の歳月をかけ、壮大な洞門を完成させました。高さ2丈、径3丈、長さ308歩という規模は、当時の技術力と人々の努力の結晶と言えるでしょう。完成当初は通行料を徴収しており、日本最古の有料道路とも言われています。

福沢諭吉と景観保存

青の洞門のある競秀峰は、中津市出身の偉人、福沢諭吉ゆかりの地でもあります。福沢諭吉は、この美しい景観を守るため、私財を投じて土地を購入したと伝えられています。地元住民の間では、「福沢諭吉が土地を買わなかったら、青の洞門は残っていなかったかもしれない」という声も聞かれ、その景観保存への尽力に感謝の念が今もなお受け継がれています。

明治時代の改修と現在の姿

明治時代には、陸軍日出生台演習場への輸送路整備のため、青の洞門は大規模な改修工事を経ています。この改修によって車両通行が可能になるよう拡幅されましたが、その結果、完成当時の原型は部分的に失われています。しかし、明かり採り窓など、一部には手掘りのノミの跡が残されており、当時の技術の高さと、人々の努力の痕跡を垣間見ることができます。現在でも、地形の関係から一部区間では片側交互通行が実施されています。

文学作品にも登場する青の洞門

青の洞門は、歴史的な背景だけでなく、数々の文学作品にも登場しています。特に、菊池寛の小説『恩讐の彼方に』は、禅海和尚の逸話を基にして書かれた作品として有名です。小説では、青の洞門は「樋田の刳貫」と呼ばれ、主人公の僧の名も了海とされています。

名称の由来と観光案内

「青の洞門」という名称は、地区名である「青」に由来し、完成当初は「樋田の刳抜（くりぬき）」と呼ばれていました。明治時代以降、観光案内書などを通じて徐々に「青の洞門」という名称が定着していったようです。

アクセスと周辺情報

青の洞門へのアクセスは、JR中津駅から大交北部バスを利用するか、車で東九州自動車道の中津インターチェンジから約20分です。周辺には無料駐車場も完備されています。バス路線は「青の洞門」バス停で下車すればすぐです。また、春にはネモフィラ、秋には紅葉など、四季折々の美しい景色を楽しむことができます。

まとめ

青の洞門は、自然の造形美と、人々の歴史と努力が融合した、まさに日本の宝と言えるでしょう。歴史、自然、そして文学と、様々な側面から楽しめる青の洞門は、一度訪れる価値のある、忘れられない観光地です。

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