青山昇三郎

青山昇三郎（あおやま しょうざぶろう、1843年2月2日 - 1918年2月22日）は、幕末から明治にかけて活躍した日本のプロテスタントの伝道者であり、牧師です。特に山口県と福岡県におけるキリスト教伝道の初期において中心的な役割を果たした人物としてその名が知られています。

生い立ちと武士時代

天保14年（1843年）1月4日、三河国岡崎藩に仕える山路家の長男として生を受けました。幼名を彦三郎といい、後に青山家の養子となり、明治39年（1956年）にその家督を継ぎました。

慶応4年（1868年）、時代の大きな転換点となった戊辰戦争では、岡崎藩士として鳥羽・伏見の戦いに出兵しましたが、旧幕府軍の敗北を経験しました。明治維新後、武士としての身分を失った彼は、新しい時代に対応するため、石油ランプ販売や捕鯨業など様々な事業を試みましたが、いずれも成功には至らず、苦境に立たされました。

キリスト教との出会いと学び

そうした中で、青山は一冊の漢文の聖書と出会います。この聖書に触れたことを契機に、キリスト教への関心を深めた彼は、さらに詳しく学ぶため東京へと居を移しました。東京では、アメリカ合衆国長老教会の宣教師デイヴィッド・タムソンのもとで学び、彼が主宰するタムソン塾の塾生となりました。

明治7年（1874年）、青山は東京の新栄教会において、タムソン宣教師から、同行していた母や妻とともに洗礼を授けられ、キリスト教徒となりました。信仰をさらに深めるため、明治10年（1877年）には東京一致神学校の第一期生として入学。同期には、後の日本基督教界を牽引する植村正久や井深梶之助らが名を連ねていました。

牧師としての伝道活動

明治12年（1879年）、按手礼を経て正式に牧師となった青山は、同年、家族とともに山口県下関（当時の赤間関）へと赴き、この地を起点として伝道活動を開始しました。当時の下関ではキリスト教への偏見が強く、伝道を行うこと自体が困難であり、定住することさえ容易ではありませんでした。

しかし、赤間関の有力者であった入江和作との出会いが大きな転機となります。入江氏の理解と支援を得た青山は、同年9月に日本基督一致教会の中会に赤間関における教会設立を請願し、承認を得ました。そして、同年12月25日、赤間関日本基督一致教会（現在の日本基督教団下関教会）が創立されました。

これを皮切りに、青山は山口県内の長府、萩、徳山、岩国、柳井、宇部、下関彦島など各地で精力的に伝道活動を展開し、次々と教会設立に尽力しました。

福岡への展開と西部中会の設立

山口での伝道と並行して、青山は活動範囲を福岡県にも広げました。明治13年（1880年）には福岡県柳河（現在の柳川）へ伝道師を派遣し、同年中に柳河一致教会（現在の日本基督教団柳川教会）を設立しました。

その後も、羽大塚、久留米、大牟田、若津、大川など、福岡県南部を中心とした各地で積極的に伝道を展開しました。困難な状況にもひるまず道を切り拓いた彼の活動は、福岡におけるキリスト教伝道の礎を築くものとなり、この地域の伝道のパイオニア、先駆者として多大な功績を残しました。

明治14年（1881年）7月には、日本基督一致教会の西部中会が設立されます。この中会は、ヘンリー・スタウトが設立した長崎一致教会、青山昇三郎が設立した柳河一致教会、そしてアメリカ長老教会の宣教師によって設立された下関教会といった、西日本の主要な一致教会によって構成されており、この地域の伝道における連携強化の要となりました。

晩年と後継者

青山昇三郎はその後も伝道者としての生涯を歩み続け、大正7年（1918年）2月22日に75歳で逝去しました。彼の長男である青山彦太郎もまた、日本基督教会を経てルーテル教会の牧師となり、祖父の伝道の志を受け継ぎました。さらに孫の青山四郎もルーテル教会の牧師となるなど、彼の信仰と伝道の精神は家族によっても引き継がれていきました。

青山昇三郎は、激動の時代の中でキリスト教の信仰を見出し、日本の西南地域における困難な伝道の草分け時代を切り拓いた、不屈の精神を持った伝道者、牧師として記憶されています。

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