青春の叫び

青春の叫び（The Wild, the Innocent & the E Street Shuffle）

『青春の叫び』（原題：The Wild, the Innocent & the E Street Shuffle）は、アメリカ合衆国のロック・ミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンによって1973年9月11日にリリースされた、通算2作目のスタジオ・アルバムです。

背景と制作

前作にあたるデビュー・アルバム『アズベリー・パークからの挨拶』（1973年）と同様、後に「Eストリート・バンド」として知られることになる強力なバックアップ・バンドのメンバーが今作でもフィーチャーされています。しかし、ドラマーのヴィニ・ロペスは、このアルバムの発表から間もない1974年2月にバンドを離れています。収録曲の中でも特に印象的な「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」は、スプリングスティーンが1972年にコロムビア・レコードのオーディションを受けた際に披露した楽曲「Vibes Man」が発展して生まれたものです。

スプリングスティーン自身は、2009年にこのアルバムの歌詞について振り返り、「収録曲の半分は、故郷であるニュージャージーや、自分たちの育った街角について歌ったものであり、残りの半分は、私がニューヨークに対して抱いていたロマンティックな幻想を描いたものだ」と語っています。このコメントは、彼の初期作品に強く現れる地元と都市への複雑な感情をよく表しています。

音楽性と評価

デビュー作『アズベリー・パークからの挨拶』が比較的フォーク・ロック的なアプローチであったのに対し、わずか8ヶ月後に発表された本作は、より野心的な音楽性を追求しています。オールミュージックのWilliam Ruhlmannはこの作品に満点の5点を与え、スプリングスティーンがジャズを含む多様なスタイルへと進化を遂げた点を高く評価しました。また、グレッグ・コットは1992年8月23日付の『シカゴ・トリビューン』紙で4点満点中3点をつけ、特にアルバムの後半に収録された3曲を「まるで『ウエスト・サイド物語』を思わせる、ゴージャスな遊歩道の組曲」と絶賛しています。Ultimate Classic Rockのデイヴ・リフトンは、この7曲がロック、ソウル、フォーク、ファンク、ジャズ（スウィングのリズムやガーシュウィン風のピアノ間奏などを含む）、さらには移動遊園地の音楽といった幅広い要素を取り入れていると指摘しており、本作の持つジャンル横断的な魅力を浮き彫りにしています。

商業的成功と後世の評価

リリース当時の『青春の叫び』は、残念ながら商業的な大きな成功には繋がりませんでした。しかし、彼の名声が確立された1975年には、アメリカの総合アルバム・チャートであるBillboard 200で最高59位を記録しました。また、リリースから12年後の1985年には、スウェーデンのアルバム・チャートでも34位にランクインするなど、時間を経て評価が高まった作品です。権威ある『ローリング・ストーン』誌が選出した「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では、133位に選出されており、歴史的な重要性も広く認められています。

収録曲

全曲ともブルース・スプリングスティーンによって書かれました。

Side 1

1. Eストリート・シャッフル - The E Street Shuffle - 4:29
2. 7月4日のアズベリー・パーク - 4th of July, Asbury Park (Sandy) - 5:36
3. キティズ・バック - Kitty's Back - 7:08
4. ワイルド・ビリーズ・サーカス・ストーリー - Wild Billy's Circus Story - 4:47

Side 2

1. 57番通りの出来事 - Incident on 57th Street - 7:44
2. ロザリータ - Rosalita (Come Out Tonight) - 7:03
3. ニューヨーク・シティ・セレナーデ - New York City Serenade - 9:58

参加ミュージシャン

以下は、本作のレコーディングに参加したミュージシャンたちです。

ブルース・スプリングスティーン: ボーカル、ギター、ハーモニカ、マンドリン、リコーダー、マラカス
クラレンス・クレモンズ: サックス、バッキング・ボーカル
デヴィッド・サンシャス: ピアノ、オルガン、エレクトリックピアノ、クラビネット、ソプラノ・サックス、バッキング・ボーカル、ストリングス・アレンジ
ダニー・フェデリシ: アコーディオン、ピアノ、オルガン、バッキング・ボーカル
ガリー・タレント: ベース、チューバ、バッキング・ボーカル
ヴィニ・ロペス: ドラムス、コルネット、バッキング・ボーカル

アディショナル・ミュージシャン:

リチャード・ブラックウェル: コンガ、パーカッション
アルバニー・テローン: バリトン・サックス (#1に参加)

本作は、スプリングスティーンがその後のキャリアで確立するストーリーテリングと、ダイナミックなEストリート・バンドのアンサンブルがより明確に形作られ始めた重要な一枚と言えます。

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