青木悠三

青木悠三：日本のアニメ史に名を刻んだ巨匠

青木悠三（あおきゆうぞう）氏は、1952年生まれの日本のアニメーターです。アニメーション界に多大な貢献を果たした氏は、時に青木雄三、港野洋介、青木進一といった名前も使用していました。神奈川県出身で、AプロダクションやDREAM MOVEといったスタジオに所属し、日本のアニメ史に燦然と輝く功績を残しました。

才能の開花と『ルパン三世』への参加

青木氏は当初、漫画家アシスタントとしてキャリアをスタートさせました。その後、1969年にAプロダクションに原画試験を経て所属。そして19歳という若さで『ルパン三世』（TV第1シリーズ）の原画制作に参加します。その卓越した画力は、作画監督の大塚康生氏をして「ルパンの愛車であるフェラーリ12気筒搭載ベンツSSKの作画は難しすぎて、自分と青木にしか描けない」と言わしめるほどでした。

『ルパン三世』TV第1シリーズ以降も、東京ムービー系作品を中心に活躍を続けます。『侍ジャイアンツ』といった東京ムービーとAプロダクションの共同制作作品に参加する一方、『激走!ルーベンカイザー』や『無敵超人ザンボット3』といった他制作会社の作品にも参加しました。

『ルパン三世』シリーズにおける中心的役割

1977年からは『ルパン三世』（TV第2シリーズ）に参加。絵コンテや原画を担当する中心的なアニメーターとなり、シリーズ全体のレベル向上に大きく貢献しました。同シリーズ終了後の1980年代からは、メカデザインや演出といった分野にも本格的に取り組み始めます。『とんでモン・ペ』のオープニングアニメーション制作や、『うる星やつら』といったスタジオぴえろの作品にも携わりました。

『ルパン三世 PARTIII』では作画監修を務め、基本となるキャラクターデザインを手がけるなど、作品のアニメーション全般を統括しました。さらに第1話の演出も担当し、原作路線への回帰を促す役割を果たしました。ルパン三世のジャケットがピンク色になったのも、青木のアイデアによるものです。

『シティーハンター』そして新たな境地

『PARTIII』以降は、弟子筋にあたるこだま兼嗣氏が監督を務めた『ロボタン』などに参加。そして1987年、こだま氏が監督を務めた『シティーハンター』では、「港野洋介」名義で参加しました。クレジットこそありませんでしたが、事実上の助監督としてこだま氏を支え、『ルパン三世』シリーズに続く代表作となりました。

『シティーハンター』への参加を通じて、江上潔氏と親交を深めます。その後は江上氏が監督を務める『HARELUYA II BØY』など、数多くの作品に参加しました。

多彩な活動と円熟期

2000年代以降は、『名探偵コナン』の絵コンテや『ポポロクロイス』の絵コンテ・デザインワークス、スポット参加として『PEACE MAKER 鐵』や『鉄人28号』（今川泰宏監督版）の原画など、幅広い作品に携わりました。

2009年の『こんにちはアン〜Before Green Gables』での原画担当を最後に、第一線から退いたと見られています。

アニメーターとしての評価

デビュー時の原画試験を一緒に受けた本多敏行氏は、青木の才能を「天才」と評しました。アニメライターの小黒祐一郎氏は、青木の作画について「『ルパン三世』（TV第1シリーズ）以降はグラフィックな方向に行く」と分析しています。

アニメーターの井上俊之氏は、青木氏を「忘れて欲しくない20人のアニメーター」の一人に選出。特に『ルパン三世ルパンVS複製人間』での作画を絶賛しています。ゲームクリエイターで元アニメーターの西村誠芳氏や、渡部高志氏なども、青木の作画技術とセンスを高く評価しています。

青木氏が演出と作画を担当した『ルパン三世』（TV第2シリーズ）のオープニングDタイプや、『シティーハンター』の初代エンディングは、高い評価を得ています。

人物像とエピソード

青木氏は、原作のある作品においてアニメーターはあくまでも「解釈者」という立場であると考えていました。自身について、キャラクターが頭の中で生き生きと動き出すと、イメージが勝手に動き出し、表情が作られていく状態になると本調子になると語っています。

カーマニアとしても知られ、独特なデフォルメ描写で車のデザインや作画を多く手がけました。「クルマが得意なアニメーター」として知られています。また、『ルパン三世』（TV第1シリーズ）でルパンの愛車がベンツSSKからフィアット500に変更されたのは、作画の難しさも理由の一つだったと言われています。

宮崎駿氏とは交流があり、あるエピソードでは、深夜に宮崎氏から作画打ち合わせの呼び出しを受け、急遽打ち合わせに参加した経験を語っています。

近藤高光氏は、青木氏に師事したとされています。

参加作品

青木氏は、数多くのアニメ作品に参加しました。代表作である『ルパン三世』シリーズ、『シティーハンター』シリーズ以外にも、『ガンバの冒険』、『おまかせスクラッパーズ』、『アリス〜モンキー・パンチの世界〜』など、多岐にわたる作品で、その才能を発揮しています。特に『ルパン三世』シリーズへの長年の参加について、複雑な思いを語ったインタビューが残されています。

青木悠三氏は、日本のアニメーション史に大きな足跡を残した、類まれな才能を持つアニメーターでした。その卓越した技術と、作品への情熱は、後世のアニメーターたちに多大な影響を与え続けています。

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