靖献遺言

靖献遺言（せいけんいげん）

『靖献遺言』は、江戸時代の儒学者、浅見絅斎によって著された書物です。貞享4年（1684年）から1687年にかけて執筆され、絅斎の死後、寛延元年（1748年）に出版されました。この書は、中国史における忠臣義士たちの生き様を描き、尊王思想の書として、日本の思想界に大きな影響を与えました。

歴史的背景と影響

『靖献遺言』は、竹内式部、梅田雲浜、吉田松陰といった幕末の志士たちに愛読されました。梅田雲浜は、吉田松陰から「靖献遺言にて固めたる男」と評されるほどでした。幕末期にはベストセラーとなり、勤王の志士たちの必読書として、明治維新の原動力の一つとなりました。また、昭和の戦時中にも影響を与え、神風特攻隊の隊員にも読む者が多かったとされています。

内容

『靖献遺言』は、以下の8人の評伝で構成されています。

屈原
諸葛孔明
陶潜
顔真卿
文天祥
謝枋得
劉因
方孝孺

これらの人物に共通するのは、正統な王朝に忠義を尽くし、その王朝の敵対者には徹底的に抵抗したという点です。特に後半の4人は、自身の栄達、生命、家族を全て捨ててまで反抗しました。彼らの忠義は、正統性の有無のみによって決まり、自身の利害や世の中のためになるかどうかは考慮されませんでした。王朝に敵対する者に対しては、講和を一切せず、徹底抗戦を貫くという生き方が、この書の主旨となっています。

著者の意図

浅見絅斎は、当初日本の人物を題材とするつもりでしたが、徳川幕府の統制を避けるため、中国の人物に変更したとされています。この背景には、徳川幕府を覇者として退け、日本の皇室の復活を願う絅斎の思想が込められていました。

まとめ

『靖献遺言』は、単なる歴史書ではなく、尊王思想を鼓舞し、日本の歴史を動かす原動力となった書物です。その影響は、幕末の志士たちから昭和の特攻隊員まで、幅広い層に及んでいます。現代においても、その思想的意義は深く、読み継がれるべき古典と言えるでしょう。

参考文献

山本七平『現人神の創作者たち』

外部リンク

現代語訳 靖献遺言 - 国立国会図書館デジタルコレクション
* 『靖献遺言』（読み下し版） - 世界の古典つまみ食い

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