静神社

静神社（しずじんじゃ）

静神社は、茨城県那珂市静に位置する神社です。格式高い式内社（名神大社）であり、常陸国二宮として知られています。かつては県社であり、神紋は「丸に桜」です。

社名について

『常陸国風土記』には、かつてこの地が「静織（しどり）の里」と呼ばれていたことが記されています。古代に綾を織る技術を初めて伝えた人物がいたことに由来すると伝えられています。また、『和名類聚抄』には「倭文郷（しどりごう）」という地名も見られ、これらの「シドリ」が変化して「静（しず）」という地名・社名になったと考えられています。さらに、『万葉集』には倭文部可良麻呂という常陸国の住民の名前があり、倭文部がこの地域に居住していたことが推測できます。

祭神

静神社では、以下の四柱の神様が祀られています。

主祭神
建葉槌命（たけはづちのみこと）：倭文神（しどりのかみ）とも呼ばれます。
相殿神
手力雄命（たぢからをのみこと）
高皇産霊命（たかみむすびのみこと）
思兼命（おもいかねのみこと）

主祭神である建葉槌命は、『古語拾遺』に「天羽槌雄神」として記載され、倭文の遠祖であり、織物を通じて天照大神に仕えたとされています。『日本書紀』には、武甕槌神・経津主神による葦原中国平定の際、従わなかった星神香香背男を平定したという記述があります。

江戸時代末期までは手力雄命が主神として祀られていましたが、『新編常陸国誌』によれば、当時は小勝村から移された手力雄命が祀られており、古くから鎮座していたのは建葉槌命であるとされています。

歴史

創建の年代ははっきりしていませんが、『新編常陸国誌』には大同元年（806年）に創建されたという社伝が記されています。

この地は倭文部、つまり文様付きの布を織る技術者集団の居住地であったと考えられており、静神社はその関係社と見られています。神社の東方には5世紀を中心とした新宿古墳群があり、静神社との関連が指摘されています。

国史には、仁和元年（885年）に「静神」の神階が従五位上に昇叙されたという記録があります。延長5年（927年）に成立した『延喜式』神名帳には、常陸国久慈郡に「静神社名神大」として記載され、名神大社に列しています。

鹿島神宮（一宮）や吉田神社（三宮）とともに、静神社は常陸国の二宮として崇敬されてきました。この背景には、麻布が庶民に普及した奈良時代以降、常陸国がその特産地であり、静神社がその生産に関与していたという説があります。

中世には佐竹氏がこの地を領有し、佐竹貞義によって静神社境内に弘願寺・西方寺・静安寺が設けられました。江戸時代には、徳川秀忠から神領150石が寄進され、水戸徳川家の祈願所として藩費によって維持管理されました。寛文7年（1667年）には、徳川光圀が社殿を修造し、3つの寺院は廃止されましたが、この際に銅印（重要文化財）が発見されました。これにより、神仏習合から唯一宗源神道に改められました。その後も徳川氏から崇敬を受け、徳川綱條からは三十六歌仙が奉納され、徳川斉昭が天保12年（1841年）の火災で焼失した社殿を再建しました。

明治時代に入り、近代社格制度では県社に列しました。

境内

本殿・拝殿・楼門などの社殿は、天保年間（1830年 - 1844年）に徳川斉昭によって再建されたものです。境内には東京織物卸商業組合が寄進した「織姫」像があります。また、静神社の使いは白い機織り物が長く伸びる様子を表した「白蛇」とされており、現在も織物との関係が深く残っています。

摂末社

本殿裏手の山中には、手接足尾神社という末社があります。手足の健康を守護する神として、手差しや草履を納めて祈願する風習があります。その他、境内には数多くの社が鎮座しています。

関係地

弘願寺：かつて静神社内にあった臨済宗の寺院で、徳川光圀によって分離されました。明治時代の廃仏毀釈により廃寺となりましたが、茨城県那珂市下大賀に再建されました。
新宿古墳群：境内東方にある古墳群で、権現塚古墳は那珂市指定史跡となっています。この古墳群は、静神社を祀った倭文部の墳墓と考えられています。

祭事

歳旦祭（1月1日）
節分祭（節分の日）
春の例祭（4月1日）
御田植祭（6月5日）
七五三祭（11月15日）
新穀感謝祭（11月23日）
織物祭（11月25日）
秋の大祭（11月25日-27日）：27日には特殊神事の蔦舞・お笹明神出御が行われます。

文化財

重要文化財（国指定）
銅印（附印笥）：奈良時代の作とされる銅製の印で、印面には「静神宮印」とあります。寛文7年（1667年）に徳川光圀による社殿造営の際に境内から発掘されました。
茨城県指定文化財
紙本著色三十六歌仙 35枚：江戸時代、水戸第3代藩主徳川綱條が奉納したものです。
那珂市指定文化財
陣太鼓：江戸時代の天保11年（1840年）頃、徳川斉昭により作られた太鼓です。

現地情報

所在地：茨城県那珂市静2
交通アクセス：JR水郡線静駅から1.5km、常磐自動車道那珂ICから6km
* 周辺：静峰公園（隣接）

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