非情議会

非情議会 (Merciless Parliament) とは

1388年2月、イングランド王リチャード2世の側近たちを大逆罪で訴追するために、訴追派貴族の主導によって招集された議会のことを指します。この議会は、その苛烈な訴追から「非情議会」と呼ばれるようになりました。

ただし、「非情議会」という呼び名は、訴追に反対する人々からのものであり、訴追を支持する人々は「素晴らしき議会 (Wonderful Parliament)」と呼んでいました。

歴史的背景

事の発端は、1387年末のラドコット・ブリッジの戦いです。この戦いで、訴追派貴族たちは国王側近であった第9代オックスフォード伯兼アイルランド公ロバート・ド・ヴィアーを破りました。この勝利とロンドン市民の支持を得たことで、訴追派貴族たちは議会を掌握することに成功します。

そして1388年2月2日、議会が招集され、貴族院において国王側近たちに対する大逆罪の訴追が開始されました。39箇条にわたる告発状が作成され、10日間の審理を経て判決が下されました。

訴追された人々

国王の最側近であったオックスフォード伯ロバート・ド・ヴィアーと初代サフォーク伯マイケル・ド・ラ・ポールを筆頭に、ヨーク大司教アレグザンダー・ネヴィル、王座裁判所首席裁判官ロバート・トレジリアン、前ロンドン市長ニコラス・ブレンバー、そして国王の元家庭教師であったサイモン・バーリーらに死刑判決が言い渡されました。

しかし、オックスフォード伯とサフォーク伯は既にイングランドから逃亡しており、判決を聞いたネヴィルも逃亡しました。実際に処刑されたのは、トレジリアン、ブレンバー、バーリーらでした。

評価

これらの訴追は、大逆罪というには根拠が薄弱であり、訴追派貴族による政敵排除が目的であったことは明白でした。そのため、訴追反対派はこの議会を「非情議会」と呼び、その非情さを批判しました。一方、訴追賛成派は、この議会を「素晴らしき議会」と呼び、その正当性を主張しました。

このように、「非情議会」は、当時の政治状況を色濃く反映した出来事であり、その評価は立場によって大きく異なりました。

参考文献

松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年。ISBN 978-4767430478。
キング, エドマンド『中世のイギリス』慶應義塾大学出版会、2006年。ISBN 978-4766413236。
* 青山吉信 編『イギリス史〈1〉先史〜中世』山川出版社〈世界歴史大系〉、1991年。ISBN 978-4634460102。

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