韋荘

韋荘（い そう、836年 - 910年）は、中国・唐代末期の詩人であり、字は端己（たんき）と称しました。彼は京兆府杜陵県（現在の西安市付近）の出身で、名門・韋見素の末裔にあたります。

韋荘の人生は、決して順風満帆ではありませんでした。長年にわたり科挙に挑戦し続けましたが、なかなか合格できず、59歳という高齢でようやく進士に及第しました。この遅咲きの合格後、彼は校書郎という官職に就きます。

当時の朝廷は、西川（現在の四川省）で勢力を拡大していた王建の叛乱に頭を悩ませていました。そこで、朝廷は李詢を正使、韋荘を補佐として、王建への宣撫工作を試みます。しかし、韋荘は朝廷の期待を裏切り、そのまま王建に仕えることを選びました。

韋荘は、王建が前蜀を建国する上で大きな役割を果たし、その功績により、吏部侍郎・同平章事という重職に任ぜられました。前蜀の都は成都に置かれ、韋荘は成都郊外にある、かつて詩聖・杜甫が住んでいた浣花草堂を修復し、自らの邸宅としたと伝えられています。このエピソードは、彼が杜甫を敬愛していたことを物語っています。

韋荘の作品は、『浣花集』10巻、及びそれを増補した『韋荘集』として現在に伝えられています。彼の詩風は、繊細で哀愁を帯びたものが多く、特に七言絶句「古別離」は、広く知られています。

韋荘は、詩人としての才能を発揮する傍ら、政治家としても活躍し、前蜀の発展に貢献しました。彼の人生は、時代の激動に翻弄されながらも、自らの信念を貫き、才能を開花させた人物として、後世に語り継がれています。

『唐詩選』（岩波文庫、前野直彬註解）にも彼の作品が収録されており、その詩は今もなお、多くの人々に愛されています。

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