韓世忠

韓世忠（かん せいちゅう）：金と戦った宋代の名将

韓世忠（1088年 - 1151年）は、中国・宋代の軍人。字は良臣。その武勇から「万人敵」と称えられました。妻の梁紅玉もまた、夫とともに金との戦いで活躍したことで知られています。

生涯

韓世忠は延州綏徳城の貧しい家に生まれました。18歳で兵士となり、軍人としてのキャリアをスタートさせます。西夏との戦いで功績を挙げますが、童貫からの評価は低いものでした。

1120年、方臘の乱が勃発すると、韓世忠は鎮圧軍に参加。反乱軍を破り、方臘を捕らえるという功績を挙げます。この時、彼の活躍を目の当たりにした王淵から「万人敵」と賞賛されました。しかし、方臘を捕らえた手柄は辛興宗に横取りされてしまいます。

1121年にも金を破り、盗賊を捕らえるなど武功を重ねます。金の侵攻の際には、王帥率いる数万の兵が敗走する中、単身で敵の包囲を突破し、欽宗を逃がすことに成功しました。

靖康の変後、高宗を護衛し、抗金闘争に身を投じます。特に「黄天蕩の戦い」では、妻の梁紅玉とともに8千の兵で金の10万の大軍を相手に、水戦を駆使して2万5千もの敵兵を討ち取るという大戦果を挙げました。その功績により、1134年には高宗から「中興の武功第一」と称えられます。

しかし、1141年に秦檜が金との和平を進める中、岳飛が無実の罪で処刑され、韓世忠も兵権を剥奪されてしまいます。失意のうちに隠退した後は、清涼居士と号し、悠々自適の生活を送りました。隠退後は、客をもてなすことはあっても、二度と兵事について語ることはなかったと言われています。

人物

妻の梁紅玉は、元は妓女でしたが、客として訪れた韓世忠に惚れ込み、結婚しました。夫婦仲は非常に睦まじかったと伝えられています。

岳飛とは、出世のスピードの違いから当初は良好な関係ではなかったようですが、後に改善されたようです。岳飛が秦檜によって無実の罪で投獄された際には、秦檜に対し「岳飛に謀反の証拠はあるのか」と詰め寄り、秦檜が「莫須有（あったかもしれない）」と答えると、「莫須有の三文字で天下を納得させることができるものか！」と激怒したという逸話が残っています。

評価

韓世忠は、金との戦いにおいて数々の武功を挙げ、南宋王朝の安定に大きく貢献しました。その勇猛果敢な戦いぶりは、多くの人々に感銘を与え、「万人敵」と称えられました。

登場作品

小説: 田中芳樹『紅塵』 - 韓世忠の息子である韓子温を主人公にした物語。

伝記

『宋史』巻三六四「韓世忠伝」

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