妓女

妓女（ぎじょ）とは

妓女とは、中国において歌や舞、様々な技芸をもって宴席に華を添え、人々をもてなす女性を指します。遊女や芸妓と訳されることもあり、時代や社会によって様々な形態が存在しました。

妓女の歴史

妓女の起源は古く、春秋時代にはその存在が確認できます。当初は、国家による徴発や戦時における奴隷が主な供給源でしたが、秦の時代以降は罪人の一族を没収する制度が加わり、民間では人身売買も行われていました。唐代以降になると、その詳細な記録が現れるようになります。

妓女の分類

妓女は、所属する場所や役割によって以下のように分類されます。

宮妓: 皇帝の后宮に所属し、皇帝を楽しませる役割を担いました。罪人として没収された女性や、外国からの献上された女性が中心でした。
家妓: 高官や貴族、商人の家に置かれ、主人の妾や客をもてなす役割を担いました。官妓から下賜されるケースもありました。
営妓: 軍隊の管轄下に置かれ、軍人や将兵を慰める役割を担いました。唐代に多く見られましたが、宋代以降は衰退しました。
官妓: 中央政府の教坊や州府の管轄下に置かれました。妓楼や酒楼は個別に運営され、唐代の長安の北里、明代の南京の旧院などが代表的な色街として知られています。
民妓: 民間の妓楼に所属し、売春を目的とする女性も含まれました。明代以降、官妓が衰退するとともに重要な役割を担うようになりました。

代表的な色街

唐代、長安の北里: 晩唐の孫棨の『北里志』に詳しく記述されています。長安の東市の西隣に位置し、格の高い妓楼が軒を連ねていました。教養や接遇に優れた妓女が多く、公卿をもてなすこともありました。

明代、南京の旧院: 明代の余懐の『板橋雑記』に詳しい記述があります。秦淮河沿いに妓楼が集まり、科挙の受験生や合格者が多く訪れました。妓館には花や植物が植えられ、庭園のような美しい景観が広がっていました。

妓女の実態

妓女の生活は、華やかである一方で厳しいものでした。遊び代や身請けには多額の費用がかかり、客は下級官僚や商人などが中心でした。妓女は、身請けされて嫁ぐ者もいれば、家庭に馴染めず再び妓女に戻る者もいました。また、官吏の妾になる者もいました。妓女の評判は、容姿だけでなく、話術や詩作の才能によって評価されました。

北里の妓女は文化芸術に関する学習機会に恵まれ、高い教養を身につけ、士大夫と詩作や評論を交わすことができました。しかし、身分は低く、正妻に迎えられることは稀でした。

妓女のしきたり

妓楼を経営する妓女の母は「仮母」と呼ばれ、妓女を厳しく指導しました。妓女は、毎月決まった日に寺に出かける以外は、北里から出ることを許されませんでした。官妓は、政庁の宴席に順番に供する義務がありました。妓女同士で姉妹の契りを結ぶ習慣もありました。

妓女と文学

妓女は、詩歌や小説、戯曲など、様々な文学作品に登場します。唐代には妓女を主人公とした小説が多く書かれ、妓女自身も優れた詩を詠みました。彼女たちの人生や感情は、多くの人々の心を捉え、文学の世界に大きな影響を与えました。

名妓一覧

歴史上には、数多くの名妓が存在します。彼女たちは、美貌だけでなく、高い教養や才能を持ち合わせていました。以下に代表的な名妓を挙げます。

緑珠 - 西晋の歌伎。石崇の愛妾。
蘇小小 - 南斉の妓女。江南地区で名声が高い。
薛濤 - 唐の詩妓。魚玄機とならび称される。
李師師 - 北宋の歌妓。徽宗の寵姫。
柳如是 - 明末清初の秦淮八艶の一人。

参考文献

齋藤茂「妓女と中国文人」（東方選書、2000年）
大木康「中国遊里空間」（青土社、2002年）
崔令欽・孫棨「教坊記・北里志」（平凡社、東洋文庫、齋藤茂訳注、1992年）

関連項目

教坊
後宮
遊女

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