韓嫣

韓嫣（かん えん）

韓嫣（生没年不詳）は、前漢時代に武帝の寵愛を受けた人物です。字は王孫といい、弓高侯韓頽当の孫、韓王信の曾孫にあたります。弟の韓説も同様に武帝に寵愛されました。

生涯

韓嫣は騎射に長け、聡明な人物であったと伝えられています。武帝がまだ膠東王であった頃、共に学んだ仲であり、その頃から親交がありました。武帝は即位以来、匈奴征伐を志しており、韓嫣が武事に長けていたことから、彼を非常に寵愛しました。武帝と同じ寝台で寝起きするほどであったと伝えられています。

しかし、その寵愛ぶりは周囲からは不遜と映ることもあったようです。韓嫣の奔放な振る舞いに憤慨した李当戸（李広の長男）から殴打を受けたことがありましたが、武帝はこれを不問に付しました。

江都王劉非（武帝の異母兄）が入朝し、武帝の上林苑での狩猟に同行した際のことです。武帝は韓嫣を副車に乗せ、数十騎と共に先に行かせました。江都王は遠くからそれを見て武帝だと勘違いし、道の脇に平伏して待っていました。しかし、韓嫣は江都王が平伏していることに気づかずに、そのまま通り過ぎてしまいました。これを見た江都王は激怒し、王皇太后に「王国を返上し、韓嫣のように帝の側仕えになりたい」と申し出たほどでした。

韓嫣が後宮に出入りし、宮女と関係を持っているとの報告を受けた王皇太后は、かねてから韓嫣に対して含むところがあり、ついに彼に死を賜りました。武帝は韓嫣をかばおうとしましたが、韓嫣は自ら命を絶ちました。

韓嫣は武帝の寵愛を一身に受けた人物でしたが、その寵愛ゆえに周囲の反感を買い、悲劇的な最期を遂げました。彼の生涯は、権力者の側近として生きることの難しさ、そして寵愛が時に災いとなることを示唆していると言えるでしょう。

参考文献

司馬遷著『史記』巻125 佞幸伝
班固著『漢書』巻93 佞幸伝

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