韓政

韓政（かん せい）

韓政は、生年不詳ながら元末から明初の時代にかけて活躍した軍人です。本貫は睢州襄邑県にあります。元朝末期の混乱期に義兵を率いて立ち上がり、その軍事的な才能を初期から発揮しました。

朱元璋への帰順と濠州攻略

元末の混乱の中で、韓政は自ら兵を挙げて義兵元帥となり、頭角を現しました。その後、朱元璋に帰順し、その麾下に入ると江淮行省平章政事に任じられました。当時の濠州は、李済が張士誠の勢力を背景に独立勢力として振る舞っており、その攻略が急務となっていました。朱元璋は、李善長を通じて李済を帰順させようとしましたが失敗に終わりました。そこで、韓政と顧時が濠州攻略の任を担うことになります。韓政らは、雲梯や砲石を用いて四方から城を攻め立て、李済を降伏させることに成功しました。降伏した李済は応天府へ送られ、濠州は顧時によって守られることとなりました。

安豊攻略と北伐での活躍

韓政は、徐達に従って安豊の攻略にも参加しました。この戦いでは、城の四方を牽制しつつ、秘密裏に龍尾壩の地下にトンネルを掘り進めました。トンネルが城内20丈の地点に到達すると、城壁を崩壊させ、城を陥落させるという奇策を成功させました。元の将軍である忻都、竹貞、左君弼は逃走しましたが、韓政は40里あまり追撃して忻都を捕らえました。その後、竹貞が兵を率いて反撃してきた際には、城の南門でこれを撃破し、淮東と淮西の平定に大きく貢献しました。

張士誠の平定戦や北伐にも参加し、梁城の守将である盧斌を降伏させるなどの功績を上げました。黄河南岸を制圧し、山東への元の援軍を遮断する役割も担い、益都、済寧、済南の攻略戦でも活躍しました。特に東平攻略では最大の功績を上げ、山東行省平章政事に昇進しました。

臨清では徐達の軍と合流し、東昌の守備を任されました。大都が陥落すると、広平の守備を命じられ、白土の諸寨を説得して降伏させました。その後、彰徳に移り、呉庸、王居義、小鎖児らが拠る蟻尖寨を攻略しました。呉庸が王居義と小鎖児を殺害して降伏すると、蟻尖寨を制圧し、兵士1万人余りを獲得しました。陝西での転戦を経て、河北の守備に戻りました。

東平侯への封爵と晩年

洪武3年（1370年）、韓政は長年の功績が認められ、東平侯に封じられ、世襲の権利を与えられました。山東への駐屯を経て、再び河北へ移され、流民を招撫し、人々の生活再建に尽力しました。左副将軍の李文忠に従って応昌を攻撃し、臚朐河に到達した際には、李文忠が敵地深く進軍したため、韓政は輜重の守備を任されました。応天府に戻った後は、河南と陝西の巡視を命じられ、信国公の湯和に従って臨清で練兵を行いました。

洪武11年（1378年）2月、韓政は亡くなりました。死後、鄆国公を追封されました。

韓政の死後

子の韓勲が後を継ぎましたが、洪武26年（1393年）に藍玉の獄に連座して処刑され、爵位は剥奪されてしまいました。

韓政は、元末から明初にかけての激動期において、卓越した軍事的能力を発揮し、朱元璋の天下統一に大きく貢献した人物でした。しかし、その後の不幸な出来事により、その功績は十分に語り継がれることはありませんでした。

参考文献

* 『明史』巻130 列伝第18

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