韓明淑

韓明淑（ハン・ミョンスク）：韓国初の女性首相、その波乱の生涯

韓明淑（ハン・ミョンスク、1944年3月24日 - ）は、大韓民国の政治家であり、第37代国務総理（首相）を務めた人物です。彼女は、韓国憲政史上初の女性首相として知られています。国会議員（第16・17・19代）、民主統合党代表、盧武鉉財団理事長、民主党常任顧問など、数々の要職を歴任しました。

生い立ちと民主化運動

韓明淑は平壌出身で、貞信女子高、梨花女子大学フランス文学科を卒業。その後、韓神大学校宣教神学大学院、梨花女子大学校大学院で修士号を取得しました。1967年に大学教授の朴聖焌と結婚。1970年代には、韓国神学大学校、梨花女子大学校、聖心女子大学校で講師を務めました。

彼女の人生における大きな転換期は、夫が人民革命党事件で逮捕され、長期間服役したことでした。この事件をきっかけに、韓明淑は民主化運動に身を投じ、女性指導者の育成に尽力しました。1979年にはクリスチャン・アカデミー事件で逮捕され、KCIA（大韓民国中央情報部）から拷問を受け、2年間投獄されるという過酷な経験もしました。

女性運動と市民運動

1980年代後半から1990年代にかけて、韓明淑は女性運動と市民運動の中心的な役割を担いました。韓国女性民友会長、韓国女性団体連合常任代表を歴任し、1994年には市民運動団体「参与連帯」の共同代表を務めました。彼女は、女性の政治参加や家族法の改正、性暴力防止、母性保護に関する法律制定を主導しました。

政界入りと国務総理

1999年、韓明淑は金大中政権与党の新千年民主党に入党し、政界入りを果たしました。2000年の第16代国会議員選挙で初当選し、2001年には女性家族部の初代長官に就任。2003年から2004年までは環境部長官を務めました。2004年の第17代国会議員選挙では再選を果たし、政治家としての地位を確立しました。

2006年4月、韓明淑は国務総理に任命され、韓国初の女性首相となりました。しかし、2007年3月に首相を辞任。その後、大統領選挙に出馬を表明するも撤回し、2008年の総選挙では落選しました。

ソウル市長選と民主統合党代表

2010年、ソウル市長選挙に出馬しましたが、現職の呉世勲に僅差で敗れました。2011年には、民主党と市民統合党などが合同して結成された民主統合党の代表に就任。党の支持率を一時的に高めたものの、総選挙での敗北を受けて辞任しました。

政治資金法違反と収監

2009年、首相在任時の汚職疑惑が浮上。2013年、政治資金法違反で懲役2年の実刑判決を受けました。2015年、大法院が上告を棄却し、刑が確定。収監されました。2017年に刑期を終え出所しましたが、2021年には文在寅政権によって特別赦免・復権となりました。しかし、追徴金は一部未納のままです。

政策と評価

韓明淑は、国家保安法廃止法案に署名するなど、左派的な政策を推進したと見られています。彼女の政治活動は、女性の権利向上や民主化運動に貢献した一方で、政治資金法違反で有罪判決を受けたことで、毀誉褒貶が分かれます。しかし、韓国初の女性首相として、その功績は歴史に刻まれています。

「韓李明淑」という名前について

韓明淑は、「韓李明淑」（ハニ・ミョンスク）という名前が使われることがあります。これは、両親の姓を併記する名前であり、韓国ではフェミニストを中心に推進されています。この名前は、伝統的な父系の家族制度に対する批判的な姿勢を示しています。他に類似のケースとしては共に民主党系の「梁李媛瑛」「南尹仁順」が挙げられます。

まとめ

韓明淑は、激動の韓国現代史を生き抜いた政治家であり、女性の権利向上や民主化運動に尽力しました。しかし、汚職疑惑や政治資金法違反で有罪判決を受けるなど、波乱に満ちた生涯を送りました。彼女の功績と過ちは、韓国の政治史において重要な教訓となっています。

もう一度検索