音韻論

音韻論の概要

音韻論（おんいんろん、英: phonology）は、言語学の一分野であり、音声、すなわち言語音の機能に焦点をあてた研究を行います。音声学が言語音の物理的側面を扱うのに対し、音韻論は音声の役割や機能、ならびにそれらの抽象的な概念に注目します。ただし、定義や研究方法については学派ごとに異なる見解があります。

音声学と音韻論の違い

音声学は音声の生成過程や伝達方法、理解に関する精密な分析を目指す一方、音韻論はその音が言語体系における意味形成や区別にどのように寄与しているかに焦点をあてます。具体的に言えば、音声学は「音声の作成と理解」を研究し、音韻論は「音声の組織化と意味の構築」を探求します。プラハ学派が音声学と音韻論を分ける理論を強化し、その影響で音声学はパロール（実際に話される音声）を、音韻論はラング（言語システム）を研究するとされました。

主な研究対象

音韻論の中心的なテーマは「音素」、「弁別素性」、「韻律」です。

音素

音素は、知的意味を区別する最小単位です。例として、日本語の「パン」/paɴ/と「バン」/baɴ/を挙げることができます。これらは、/p/と/b/という異なる音素によって意味が異なります。音素の厳密な定義は学派によって異なり、音素を中心にした研究は「音素論」とも呼ばれます。

弁別素性

音素の対立を異なる特性に分解する概念が「弁別素性」です。この理論は、音の特質を細分化して理解することを目指し、プラハ学派によって発展しました。

韻律

韻律は、音声における高さ、強さ、長さの特徴を指します。韻律素という概念が音素と並行して立てられることもあります。この研究対象には、アクセント、声調、イントネーションが含まれ、言語におけるこれらの要素の調査がなされます。

その他の音韻論的テーマ

音韻論の研究は音節や同化、異化、中和、形態音韻論、史的音韻論といった多岐にわたります。これらの研究は、言語の音声的な特性や歴史的な変遷を理解するために重要です。

音韻論の学派

音韻論は数多くの学派に分かれ、各地で理論が発展してきました。20世紀初頭のヨーロッパでは、プラハ学派やコペンハーゲン学派、ロンドン学派などが重要でした。ロシア・旧ソ連における音韻論も、革命後は独自の発展を遂げました。

アメリカでは、サピアやブルームフィールドが音韻論に寄与し、特にブルームフィールドはその影響力が大きかったです。また、ヤーコブソンはプラハ学派の理論をアメリカに持ち込みました。

生成音韻論

20世紀半ば、チョムスキーが生成文法を提唱したことで、音韻論は新たな段階に入ります。生成音韻論は、言語の構造を深く考察し、従来の音韻論から逸脱された理論を生み出しました。

日本における音韻論

日本の音韻論は、プラハ学派やブルームフィールド学派の影響を強く受けて発展してきました。代表的な研究者には有坂秀世や服部四郎がいます。また、生成音韻論の影響も受けており、日々進展しています。

以上が音韻論の概要であり、その研究は言語学において音声と意味の関係を探求する重要な役割を果たしています。

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