響け! ユーフォニアム

『響け！ユーフォニアム』シリーズ



『響け！ユーフォニアム』（ひびけ ユーフォニアム、Sound! Euphonium）は、武田綾乃による日本の小説シリーズです。宝島社（宝島社文庫）より2013年12月から刊行されています。この作品は、吹奏楽に情熱を燃やす高校生たちの青春を描いた物語で、多くの読者や視聴者を魅了しています。

シリーズの展開



シリーズ第1作『響け！ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』は、2013年12月に刊行され、その後コミカライズ、テレビアニメ化されました。2015年3月には続編となる『響け！ユーフォニアム2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』と『響け！ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機』が発刊されました。同年6月には、登場人物たちのエピソードを描いた短編集『響け！ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』も刊行されました。2024年6月時点でシリーズ累計部数は200万部を突破しています。

2016年4月には、テレビアニメ第1期を振り返る劇場版が公開され、同年10月からはテレビアニメ第2期が放送されました。2017年9月には、テレビアニメ第2期を振り返る劇場版も公開されています。

2016年8月・9月には、本編の主人公・黄前久美子の友人である佐々木梓を主人公としたスピンオフ作品『響け！ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ』（前編・後編）が刊行されました。2016年10月には、短編小説2篇を収録した公式ガイドブック『響け！ユーフォニアム 北宇治高校の吹奏楽部日誌』も発売されています。

2017年8月・10月には、2年生編となる『響け！ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』（前編・後編）が、2018年4月には短編集『響け！ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』が刊行されました。

2018年4月には、スピンオフの長編アニメーション映画『リズと青い鳥』が、2019年4月には完全新作映画『劇場版 響け！ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』が公開されています。

2019年4月・6月には、3年生編となる『響け！ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章』（前編・後編）が刊行され、本編が完結しました。2021年2月には、シリーズの登場人物・中川夏紀を主人公としたスピンオフ『飛び立つ君の背を見上げる』が刊行されました。

2023年8月には、中編アニメーション『特別編 響け！ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』が劇場公開され、2024年4月からはテレビアニメ第3期が放送されています。2024年6月には、3年生編の短編集『響け！ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のみんなの話』が刊行されました。

概要



この物語は、作者の武田綾乃の出身地である京都府宇治市を舞台に、吹奏楽に青春を捧げる高校生たちの人間模様を描いています。物語の舞台となる北宇治高校吹奏楽部は、かつては強豪校でしたが、現在は低迷しています。主人公たちは、受験や恋愛、仲間との衝突、親との関係など、思春期特有の悩みを抱えながら、新任顧問のもとで全国大会出場を目指して奮闘します。作者の武田自身も小中学生時代に吹奏楽部に所属しており、その経験と取材に基づいたリアルな描写が作品の魅力です。作品には、「努力は必ず報われるとは限らないが、それでも努力することに意味がある」というテーマが込められています。作中には、京阪宇治駅やあがた祭り、仏徳山など、宇治市の名所や行事が数多く登場します。

あらすじ



北宇治高校吹奏楽部へようこそ


主人公の黄前久美子は、北宇治高校に入学し、吹奏楽部に入部します。小学生の頃から吹奏楽を続けていた久美子は、ユーフォニアムを担当することになります。彼女のクラスメイトである川島緑輝（コントラバス）、加藤葉月（チューバ）も低音パートに配属され、幼馴染の塚本秀一はトロンボーンを担当します。また、中学時代に久美子と全国大会を目指していた高坂麗奈もトランペット奏者として入部します。新顧問の滝昇は、全国大会を目指すことを部員に決意させ、厳しい指導を開始します。コンクールのメンバー選考ではオーディションが導入され、ユーフォニアムでは中川夏紀が落選し、トランペットでは麗奈がソロ奏者に選ばれます。府大会前日には、3年生の中世古香織が再オーディションを願い出るも、麗奈の実力が認められ、北宇治高校は関西大会進出を果たします。

北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏


関西大会に向けた練習中、昨年退部した傘木希美が姿を現し、希美のフルート演奏を聞いた鎧塚みぞれが体調を崩します。みぞれは、過去に希美に見捨てられたと感じており、トラウマを抱えていました。副部長の田中あすかは、みぞれの状態を優先し、希美の再入部を拒みます。しかし、友人たちの説得で2人は関係を修復し、みぞれの演奏は劇的に変化します。関西大会当日、北宇治高校は最高の演奏をしますが、全国大会出場は厳しい状況でした。しかし、強豪校のミスにより、北宇治高校は全国大会への出場を決めます。

北宇治高校吹奏楽部、最大の危機


2学期に入り、久美子たちは文化祭や地域の行事をこなしながら全国大会に向けて練習に励みます。久美子は、あすかの母親が娘を退部させようとする様子を目撃します。母親は受験への悪影響を理由にしますが、あすかが音楽家の父親と同じ楽器を演奏することにも苛立ちを抱いていました。顧問の滝は退部を認めませんが、あすかは練習を休みがちになります。久美子は姉との関係から、あすかを励まし、部への復帰を促します。全国大会では、銅賞に終わりますが、審査員からのメッセージはあすかを励ますものでした。

北宇治高校の吹奏楽部日誌


冬になり、久美子は定期演奏会係に任命され、先輩のみぞれとともに曲目選びに知恵を絞ります。部員たちは演奏会に向け準備を進めます。久美子と麗奈は、マーチングの強豪校である立華高校に進学した佐々木梓と再会し、彼女の演奏の上達ぶりに驚きます。久美子は、麗奈との差を感じますが、秀一や先輩たちの励ましで、立華高校との合同演奏会でのソロ奏者に選ばれます。

北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章


2年生になった久美子は、新入部員の指導係となります。新入部員の久石奏は、八方美人で品行方正ですが、演奏の劣る3年生の夏紀に辛辣な態度をとります。久美子は、2人の関係改善を模索し、オーディションでは、ユーフォニアムは3人全員がメンバー入りを果たします。自由曲の『リズと青い鳥』では、みぞれと希美の関係性が焦点となります。みぞれは、希美に見捨てられたくない一心で部活を続けてきましたが、希美は音大に進学するつもりがないことを知ります。演奏表現に悩むみぞれは、新山コーチの助言により、感情を込めた演奏ができるようになります。その年のコンクールで、北宇治高校は全国大会への出場を逃しますが、久美子は次期部長として全国大会金賞を目標に掲げます。

北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章


3年生に進級した久美子たちは、新入部員を迎えます。吹奏楽強豪校から転入してきた黒江真由は、すぐに部員たちと打ち解けますが、2年生の奏は彼女を警戒します。全国金賞を目指すため、麗奈の指導は厳しさを増し、新入部員は委縮してしまいます。コンクールのオーディションでは、2年生のさつきが落選し、1年生の釜屋すずめが選ばれます。関西大会のオーディションでは、真由がユーフォニアムのソリストに選ばれます。実力主義の方針に反発する部員たちも現れ、部内は分裂状態となりますが、久美子はあすかとの再会を通じて、真由や麗奈との関係を修復します。そして、北宇治高校は悲願の全国大会金賞を勝ち取ります。

立華高校マーチングバンドへようこそ


久美子と同じ中学出身の佐々木梓は、マーチングバンドの強豪校である立華高校に進学し、吹奏楽部で活躍します。梓は、仲間を指導することに喜びを感じますが、人に頼られることに依存していることに気づき、苦悩します。また、中学時代の友人との再会や、部内の人間関係に悩みながらも、マーチングバンドの活動を通して成長していきます。立華高校は全国大会でゴールド金賞を獲得します。

登場楽曲



本作には、実在の曲や架空の曲が登場します。

  • - キャント・バイ・ミー・ラヴ: サンライズフェスティバルでの北宇治高校の演奏曲。
  • - 錨を上げて: 立華高校がサンライズフェスティバルで演奏した曲。
  • - 三日月の舞: 北宇治高校のコンクール課題曲（架空の曲）。
  • - イーストコーストの風景: 北宇治高校のコンクール自由曲。
  • - コパカバーナ: 北宇治高校B部門が演奏した曲。
  • - バレエ音楽《ダフニスとクロエ》第二組曲: 秀塔大学附属高校のコンクール自由曲。
  • - 大阪俗謡による幻想曲: 明静工科高校のコンクール自由曲。
  • - A列車で行こう: 北宇治高校が文化祭などで演奏した曲。
  • - シング・シング・シング: 北宇治高校が文化祭などで演奏した曲。
  • - 響け！ユーフォニアム: あすかの父が作曲したユーフォニアムの練習曲（架空の曲）。
  • - きらきら星: 北宇治高校吹奏楽部の基礎練習曲。
  • - リズと青い鳥: 北宇治高校の自由曲（架空の曲）。
  • - ラリマー: 北宇治高校の課題曲（架空の曲）。

既刊一覧



シリーズは、2024年6月27日時点で11巻が刊行されています。


スピンオフ作品



  • - 『響け！ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ』（全2巻）
  • - 『飛び立つ君の背を見上げる』

短編作品一覧




その他の短編作品



  • - それじゃあ、またね
  • - ある日、東京にて
  • - 君ありて幸福
  • - 休日、愛らしい友人と
  • - 贈り物に愛を込めて
  • - 偶発的再会と他愛ない会話について

漫画




アニメ



  • - テレビアニメ第1期（2015年4月～7月放送）
  • - テレビアニメ第2期『響け！ユーフォニアム2』（2016年10月～12月放送）
  • - 劇場版『劇場版 響け！ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜』（2016年4月公開）
  • - 劇場版『劇場版 響け！ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜』（2017年9月公開）
  • - 劇場版『リズと青い鳥』（2018年4月公開）
  • - 劇場版『劇場版 響け！ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』（2019年4月公開）
  • - 中編アニメーション『特別編 響け！ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』（2023年8月公開）
  • - テレビアニメ第3期『響け！ユーフォニアム3』（2024年4月～6月放送）

脚注



[脚注]

外部リンク



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