須田努

須田 努

須田 努（すだ つとむ）は、1959年（昭和34年）生まれの日本の歴史学者です。現在、明治大学情報コミュニケーション学部で教授を務めています。専門は日本近世史、近代史、民衆運動史、そして民衆思想史にわたり、中でも特に江戸時代後期から明治維新期にかけての社会変動と、それに伴う民衆の動向、いわゆる「悪党」の研究において、日本の学界で重要な位置を占めています。

群馬県高崎市に生まれた須田氏は、1981年に明治大学文学部史学地理学科を卒業しました。その後、早稲田大学大学院文学研究科日本史学専攻に進み、1991年に博士課程を単位取得満期退学しています。研究生活を続けながら、2002年には「「悪党」の一九世紀 民衆運動の変質から見た近代移行期」と題した論文により、早稲田大学から博士（文学）の学位を取得しました。この博士論文は、後の主要な研究テーマの基礎となるものです。

大学教員となる以前には、研数学館や河合塾で日本史科の講師を務めるなど、教育の現場での経験も豊富です。2008年に明治大学情報コミュニケーション学部の准教授に着任し、その後教授に昇進しました。大学では専門分野に関する講義や研究指導を行っています。また、アジア民衆史研究会の幹事としても活動し、関連分野の研究交流にも貢献しています。

研究活動においては、近世末期から近代初頭にかけての激動期における民衆の意識や行動様式に光を当てています。特に、従来の枠組みに収まらない、逸脱した存在として捉えられがちな「悪党」の役割やその社会的背景を詳細に分析し、彼らの存在が近代社会への移行期に果たした意味を考察しています。この研究は、日本史学における民衆運動史や社会変動論に新たな視点をもたらしました。関連項目として挙げられる天保騒動なども、氏の研究対象と深く関わる出来事です。

主な著作には、博士論文を基にした『「悪党」の一九世紀 民衆運動の変質と“近代移行期”』（青木書店、2002年）があります。このほか、幕末の社会状況や民衆の動向を論じた『幕末の世直し 万人の戦争状態』（吉川弘文館、2010年）、『幕末社会』（岩波新書、2022年）や、明治期の落語家である三遊亭円朝とその時代の民衆文化に焦点を当てた『三遊亭円朝と江戸落語』（吉川弘文館、2015年）、『三遊亭円朝と民衆世界』（有志舎、2017年）など、多岐にわたるテーマで研究成果を発表しています。また、『吉田松陰の時代』（岩波書店、2017年）といった特定の人物像を通じた時代分析も行っています。さらに、共編著として『暴力の地平を超えて 歴史学からの挑戦』（趙景達, 中嶋久人共著、青木書店、2004年）や、『逸脱する百姓 菅野八郎からみる一九世紀の社会』（編、東京堂出版、2010年）などがあり、他の研究者との共同研究にも積極的に取り組んでいます。

須田努氏は、その研究を通じて、教科書的な歴史像にとどまらない、民衆の視点から見た日本近世・近代史の多様でダイナミックな側面を明らかにし、日本の歴史学研究に貢献し続けています。

`

もう一度検索