須見新一郎

須見新一郎

須見新一郎（すみ しんいちろう、1892年3月30日 - 1977年4月15日）は、大日本帝国陸軍の軍人です。最終階級は陸軍大佐。特に、1939年のノモンハン事件において、第7師団歩兵第26連隊長として参加し、激戦を生き抜いたことで知られています。この戦いで、多くの指揮官が命を落とす中、須見は数少ない生き残った連隊長の一人でした。

生い立ちと軍歴

東京府出身の須見は、須見泰三郎の三男として生まれました。陸軍中央幼年学校を経て、1913年に陸軍士官学校を卒業。歩兵少尉に任官後、歩兵第66連隊に配属されました。その後、陸軍大学校を卒業し、陸軍省軍務局勤務、連隊中隊長を歴任。

1924年からは軍務局や整備局で勤務し、その後、第1師団参謀を経験しました。1928年に歩兵少佐に昇進。1930年には歩兵第2連隊大隊長に就任し、整備局課員や参謀本部員も兼務しました。1933年には歩兵中佐に昇進し、満州国ハルピン駐在、陸軍技術本部付、関東軍司令部付、歩兵第35連隊付などを経て、1935年、黒河特務機関長に就任しました。さらに、綏芬河特務機関長を経て、1937年に歩兵大佐に進級し、麻布連隊区司令官となりました。

1938年、歩兵第26連隊長に就任。その後のノモンハン事件では、最前線で指揮を執りました。

ノモンハン事件での活躍とその後

ノモンハン事件において、須見が率いる第26連隊は、火炎瓶を用いた戦車攻撃でソ連軍戦車を多数撃破したことで知られています。しかし、小松原道太郎師団長の無謀な作戦に反対し、その結果、事件後に予備役編入となりました。須見自身は、当時の上層部の作戦を「でたらめな戦争」と批判し、責任を部下に転嫁する態度に強い不満を抱いていました。

戦後、須見は南支調査会常務理事や原田積善会理事長を務めた後、長野県上山田温泉で旅館を経営しました。作家の司馬遼太郎の取材を受けましたが、司馬が瀬島龍三と対談したことを知ると、取材を拒否しました。須見は、瀬島が戦時中に同じ連隊に所属していたこともあり、瀬島の行動を強く批判していたようです。

ノモンハン事件への認識

須見は、ノモンハン事件について、当時の日本軍の指揮官たちがソ連軍を甘く見ていたと指摘しています。また、作戦の失敗を部隊の責任に転嫁し、責任を取らせようとした当時の上層部の姿勢を非難しました。停戦協定後も、陸軍省や参謀本部が本質的な問題点を理解しようとしなかったと述べています。

晩年

戦後、須見は公職追放を経て、長野県上山田温泉で旅館「三楽荘」の主人として余生を送りました。彼の墓所は東京の護国寺にあります。

参考資料

岩城成幸『ノモンハン事件の虚像と実像』細流社、2013年。
森山康平『はじめてのノモンハン事件』PHP研究所、2012年。
三田真弘『ノモンハンの死闘 七師団戦記』北海タイムス、1965年。
伊藤桂一『静かなノモンハン』講談社文芸文庫、1983年。
『証言・私の昭和史②戦争への道』文春文庫、1989年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
* 外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

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