預言者 (オペラ)

ジャコモ・マイアベーアのグランド・オペラ『預言者』

『預言者』（仏: Le Prophète）は、ジャコモ・マイアベーアが作曲した5幕構成のグランド・オペラです。1849年4月16日にパリ・オペラ座で初演されました。台本はウジェーヌ・スクリーブとエミール・デシャンが手がけています。

作曲の背景

マイアベーアは、『悪魔のロベール』でグランド・オペラの形式を確立し、『ユグノー教徒』で大成功を収めました。そのため、新作を急いで発表する必要に迫られていませんでした。有力な歌手たちのピークが過ぎたこともあり、歌手選びに時間をかけた結果、フィデス役はポーリーヌ・ヴィアルドのために、ジャン役はギュスターヴ＝イポリット・ロジェのために書かれることになりました。

初演とその後

初演には、ヴェルディ、ツルゲーネフ、ショパン、ゴーティエ、ベルリオーズ、ドラクロワなど、多くの著名人が駆けつけました。ヴィアルドのフィデス役は絶賛され、彼女は200回もの上演をこなしました。また、この公演では、オペラ史上初めて電力による照明が試みられています。

『預言者』は、初演後、世界各地で上演され、20世紀初頭まで人気を博しました。しかし、その後は上演機会が減少し、近年になって再び注目を集めるようになっています。

リブレット

スクリーブは、ヴォルテールの『諸国民の風俗と精神について』、ジュール・ミシュレが編集した『ルター回想録』、カール・フランツ・ファン・デア・ヴェルデの小説『再洗礼派』を原作として、リブレットを執筆しました。彼は、当時のフランスの政治状況を考慮し、検閲を回避するために、内容を吟味しています。具体的には、民衆の蜂起という構図を避け、ジャンの個人的な復讐を中心に据えることで、政治色を薄めることに成功しました。

楽曲の特徴

『預言者』には、有名な「戴冠式行進曲」や、再洗礼派のメロディ「我らに救いを求めし者たちに」など、印象的な楽曲が数多くあります。「戴冠式行進曲」は、18本のサクソルンを使用した大規模なもので、吹奏楽でも演奏されます。また、バレエ曲「レ・パティヌール」は、ダンサーがローラースケートを履いて演じられたことで話題となりました。

あらすじ

舞台は16世紀のオランダとドイツ。主人公のジャンは、再洗礼派の指導者となり、ミュンスターで反乱を起こします。彼は、恋人のベルトをオーベルタル伯爵に奪われたことに対する復讐を誓い、民衆を率いて戦いますが、最後は悲劇的な結末を迎えます。ジャンの母親であるフィデスは、彼を救おうとしますが、力及ばず、息子と共に死を迎えます。

主要な登場人物

ジャン・ド・レド: 預言者。再洗礼派の指導者。
フィデス: ジャンの母親。
ベルト: ジャンの恋人。
オーベルタル伯爵: ジャンと対立する貴族。

近年のリバイバル

近年、『預言者』は、メトロポリタン歌劇場、ウィーン国立歌劇場、カールスルーエ・バーデン州立劇場、エッセンのアアルト・シアター、トゥールーズのキャピトル劇場、ベルリン・ドイツ・オペラなどで上演されています。

楽器編成

木管楽器: フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、コールアングレ1、クラリネット2、バスクラリネット1、バスーン4
金管楽器: ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、オフィクレイド1
打楽器: ティンパニ3、大太鼓、トライアングル、シンバル、小太鼓、タムタム
ハープ2、弦五部、オルガン1（四手）

まとめ

『預言者』は、音楽、ドラマ、スペクタクルが融合した壮大なグランド・オペラです。16世紀のミュンスターの反乱を題材に、人間の欲望、信仰、愛、復讐を描いています。近年、再び注目を集めており、今後、上演機会が増えることが期待されます。

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