顔じゃない

顔じゃないとは

「顔じゃない」とは、大相撲界で用いられる隠語で、「分不相応」を指します。この言葉は、身分や能力がつり合わず、ふさわしくない状況を表現する際に使われます。また、相手の非礼や不作法を叱る場合にも適用されることがあります。

由来

この語の由来には、日本の相撲界内での独特の人間関係や文化が影響しています。特に、力士同士や関係者の間で用いられる言葉であり、時には厳しい意味を持つこともあります。大相撲の隠語は、多くの場合、関係者の心情や微妙なニュアンスが含まれており、それがこの言葉の重みや奥深さを生んでいます。

エピソード

この言葉が注目を集めた一つのエピソードは、元横綱・朝青龍明徳に関する出来事です。2008年7月に行われた場所から、彼の成績は著しく低下し、2009年1月場所が近づく中、「進退を掛ける場所」「引退の危機」といった報道がなされていました。そんな中、朝青龍は出羽海部屋での稽古に励んでいました。

その稽古を取材していたNHKの大相撲解説者でありタレントの舞の海秀平（元小結）は、部屋の稽古を終えた朝青龍に「横綱、まだ引退しないで下さいね」と声をかけました。しかし、その返事は予想外のものでした。朝青龍は不機嫌そうに「顔じゃないよ!」と一喝し、その後すぐに車に乗り込みました。この発言は、マスコミに「朝青龍が大先輩に対して失礼な発言をした」と取り上げられ、大きな議論を呼びました。

さらに、その翌日、朝青龍は横綱審議委員会の稽古総見で再び舞の海と偶然にも顔を合わせました。朝青龍は舞の海を「おう、秀平」と呼び捨てにし、舞の海は「横綱に名前を憶えてもらって光栄」と嬉しそうに応じました。このやり取りは、双方にとって皮肉ともいえる結果をもたらしました。

他の事例

さらに、2024年4月には、元大関・霧島が65歳を迎え、その引退に伴い、彼の経営する陸奥部屋の後継者問題が浮上しました。元前頭・敷島の浦風は、「自分は顔じゃない（分不相応）」とその継承を辞退しました。このことで、陸奥部屋は後継者不在のまま閉鎖となりました。その結果、所属していた力士たちは音羽山部屋など異なる部屋に移籍することになりました。

総括

「顔じゃない」という言葉は、力士たちの厳しい世界での身分や能力に関連する独特の表現です。このフレーズは時には礼儀や敬意に関して注意を促す役割も果たします。大相撲の文化に根ざしたこの隠語は、今後もその意味や使われ方に注目され続けることでしょう。

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