顔之推

顔之推の生涯と業績

顔之推（がん しすい、531年 - 590年頃）は、中国の南北朝時代に活躍した学者であり、彼の著作は後世に大きな影響を及ぼしました。彼の字は介で、出身地は琅邪郡臨沂県であり、顔氏一族の一員として生まれました。

経歴

彼は南朝梁の鎮西府で諮議参軍を務めていた父・顔協の子として育ちました。顔家は、祖先の顔含が江南に移って以来、儒学に精通しており、彼自身も老荘思想を嫌い、儒学に対する強い思いを抱いていました。学問においては非常に優れ、文学的な才能を有していたため、南朝梁の湘東王蕭繹に仕官し、左常侍や鎮西墨曹参軍に任命されました。

彼の官職生活は多くの酒を楽しむ一方で不規則な生活でした。郢州においては、記録を管理する役割も持っていましたが、侯景の乱によって郢州が陥落し、捕らえられて建康に送られました。その後、乱が収束すると江陵に戻り、蕭繹が即位すると彼は散騎侍郎へと昇進しました。

承聖3年（554年）には西魏の攻撃によって再度捕らえてしまいますが、李顕慶の庇護を受けながら弘農に移り住みました。黄河の氾濫を機に、彼は北斉に亡命しますが、文宣帝に気に入られ、奉朝請として帝の側近として仕えることになります。彼は中書舎人や司徒録事参軍など様々な職名を歴任し、黄門侍郎にも昇進しました。

北周が北斉を滅ぼすと、彼は御史上士として呼び戻され、隋が北周を降伏させると太子の楊勇に仕えました。しかし、彼の健康は優れず、間もなくして他界したと言われています。

主な著作

顔之推の残した著作の中で特に著名なのは『顔氏家訓』です。これは彼自身の経験をもとに、学問の大切さを子孫に伝えたものであり、6世紀の中国の社会状況を垣間見る貴重な資料となっています。この作品は、教育法や再婚時の注意点、親の愛情表現について現代にも通じる視点を提供しています。

また、彼は陸法言の集まりに参加し、文学作品『切韻』の議論にも関与しました。『還冤志』という志怪小説や自伝的な作品「観我生賦」も彼の著作として有名ですが、いくつかは現存していないのが残念です。

家族と子孫

彼には子供が3人おり、顔思魯、顔愍楚、顔游秦という名前が残されています。後に唐代に活躍した顔師古や顔真卿は、彼の子孫として知られています。

伝記資料と参考文献

顔之推に関する伝記は『北斉書』および『北史』に記されており、彼の業績や影響は今も多くの研究の対象となっています。さらに、大島正二著の『漢字と中国人ー文化史を読み解くー』でも彼の足跡が紹介されています。彼の生涯と著作は後世にわたって探求され続けており、古典文学において重要な位置を占めています。

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