顕真

顕真（けんしん）

顕真は、平安時代後期の天台宗の僧侶で、宣陽房（せんようぼう）という号でも知られています。天承元年（1131年）に生まれ、建久3年11月14日（1192年12月20日）に亡くなりました。父は右衛門権佐（うえもんのすけ）の藤原顕能（ふじわらのあきよし）、母は参議藤原為隆（ふじわらのためたか）の娘です。

生涯

顕真は、比叡山で天台教学と密教を深く学びました。その後、承安3年（1173年）に大原別所（おおはらべっしょ）に隠棲し、静かな環境で修行に励みました。この頃から、顕真は浄土信仰に強い関心を持つようになり、その思想に傾倒していきました。

文治2年（1186年）には、勝林院（しょうりんいん）において、法然（ほうねん）、重源（ちょうげん）、貞慶（じょうけい）、明遍（みょうへん）、証真（しょうしん）といった、当時の仏教界を代表する碩学（せきがく）たちを集め、大原問答（おおはらもんどう）を行ったとされています。この問答は、仏教の深い教義について議論を交わす場であり、顕真の仏教に対する深い知識と理解を示すものでした。ただし、この問答の参加者については異説も存在します。

翌文治3年（1187年）には、同じく勝林院で不断念仏（ふだんねんぶつ）を始めました。不断念仏とは、常に念仏を唱え続けることで、浄土往生を願う修行法です。顕真は、浄土信仰の実践者としても重要な役割を果たしました。

建久元年（1190年）には、第61代の天台座主（てんだいざす）に就任しました。天台座主は、天台宗の最高位であり、顕真の卓越した能力と仏教への深い理解が認められた結果と言えるでしょう。また、最勝会（さいしょうえ）という、『金光明最勝王経（こんこうみょうさいしょうおうきょう）』を講じ、国家の安泰を祈願する勅会（ちょくえ）では、証義（しょうぎ）という重要な役目を務めました。証義は、経典の内容を解釈し、会を円滑に進めるための役割です。

建久3年（1192年）、顕真は比叡山円融房（えんゆうぼう）で生涯を閉じました。その生涯は、天台宗の僧侶として、また浄土信仰の実践者として、多くの人々に影響を与えました。

顕真は、学問と実践の両面において優れた僧侶であり、その足跡は日本の仏教史において重要な位置を占めています。

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