風の回廊

山下達郎 シングル「風の回廊（コリドー）」詳細解説

1985年3月25日にリリースされた山下達郎の14枚目のシングル「風の回廊（コリドー）」は、数々の音楽史的意義を持つ作品として知られています。ホンダ・クイント インテグラのキャンペーンソングとして制作されたこの曲は、アルバム『POCKET MUSIC』にも収録され、現在も高い人気を誇ります。

曲のテーマと制作背景

「風の回廊」で描かれるのは、過ぎ去った恋の記憶の中にある、現実と幻想の狭間を漂う女性像です。山下達郎自身、このテーマを自身の作詞における重要な要素として位置付けています。

さらに注目すべきは、この曲が山下達郎にとって初のデジタル・レコーディング作品であり、コンピューター・ミュージックを初めて導入した作品であったということです。この技術革新は、彼の音楽制作に大きな転換をもたらし、後の作品にも大きな影響を与えました。CMバージョンとアルバムバージョンの違いも興味深く、CM用に制作されたバージョンは、楽器編成、ボーカル、ミックスにおいてアルバムバージョンとは微妙に異なっています。アルバムバージョンは、CMバージョンをベースに、楽器を追加するなど、時間をかけて丁寧に作り込まれていきました。その制作過程では、エンジニアの吉田保さんが次の仕事でハワイへ出張することになり、山下達郎本人が初めてミックスダウンを担当する事態となりました。山下達郎は、エンジニアというプロフェッショナルな職種への深い敬意から、普段はエンジニアの作業には極力介入しないことを心がけていたため、この経験は彼にとって非常に貴重な、そして二度とない経験となりました。

カップリング曲「潮騒（LIVE VERSION）」

カップリング曲には、「潮騒（LIVE VERSION）」が収録されています。これはコンサートツアー“PERFORMANCE '83-'84”からのライブ音源で、オリジナルバージョンはアルバム『GO AHEAD!』に収録されています。「潮騒」は、トッド・ラングレンのようなコード進行を基に制作された楽曲で、山下達郎自身も「隠れた人気曲」と評するほど、彼の音楽性を知るファンから愛されている曲です。シングルリリース後長らくCD化されていませんでしたが、後にベストアルバム『RARITIES』にニューミックスで収録されました。

パッケージとアートワーク

シングルジャケットの裏面には、歌詞とインテグラのCMスチール写真が配置されており、楽曲の世界観と商品との親和性を巧みに表現しています。

収録アルバム

「風の回廊（コリドー）」は、『POCKET MUSIC』、『POCKET MUSIC ('91 REMIX)』、『TREASURES』、『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』などに収録されており、ベストアルバムにも繰り返し収録されていることから、彼の代表曲の一つとして高い評価を受けていることがわかります。「潮騒（LIVE VERSION）」は、シングル「白いアンブレラ／ラッキー・ガールに花束を」にも収録されています。

レコーディングメンバー

「風の回廊（コリドー）」のレコーディングには、山下達郎自身に加え、青山純（ドラムス）、淵野繁雄（テナーサックスソロ）など、そうそうたるメンバーが参加しています。「潮騒（LIVE VERSION）」にも、青山純、伊藤広規、椎名和夫など、実力派ミュージシャンが多数参加しており、楽曲の高い完成度を支えています。

まとめ

「風の回廊（コリドー）」は、音楽的な革新と、山下達郎の音楽性、そして制作過程における様々なエピソードが詰まった、彼の代表作の一つと言えるでしょう。デジタルレコーディングの導入、初めて自らミックスダウンを担当した経験など、音楽史的にも重要な意味を持つシングルであり、彼の音楽キャリアにおいて大きな転換点となった作品です。このシングルは、山下達郎の音楽的探求心と、その高い音楽性を示す重要な作品として、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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