風酒場

美空ひばりのシングル「風酒場」は、1979年4月1日に日本コロムビアからリリースされました。このシングルは、A面に「風酒場」、B面に「海鳥に向う女」を収録しています。

作曲を手掛けたのは、韓国の国民的作曲家として知られる朴椿石です。彼は1960年代から1970年代にかけて数多くのヒット曲を生み出し、その名を知られていました。日本でも「カスマプゲ」などの曲で知られる朴椿石ですが、1978年12月に日本コロムビアからの依頼を受け、この「風酒場」の作曲が実現しました。朴椿石の楽曲が美空ひばりによって歌われるという、日韓の音楽文化の交流とも言える出来事でした。

「風酒場」の歌詞には、「古賀メロディ」と呼ばれるフレーズが登場します。これは、日本の歌謡界を代表する作曲家である古賀政男の楽曲を想起させるもので、この曲が持つ多様な魅力を引き立てています。1980年1月4日に放送されたNHKの番組「新春 夢の競演」では、美空ひばりが「風酒場」を歌唱した際、古賀政男作曲の「影を慕いて」がアンコールに挟まれるという演出がありました。このことからも、「風酒場」が日本の歌謡界に深く根ざした楽曲であることがわかります。

美空ひばりは、1979年5月27日にTBSの音楽番組「サウンド・イン"S"」に初出演した際にも、この「風酒場」をしっとりと歌い上げました。彼女の卓越した歌唱力と表現力によって、「風酒場」は多くの人々の心に深く刻まれました。この時の歌唱は、2015年に発売されたDVD「美空ひばり 宙 (そらから)」にも収録されており、今でもその感動を味わうことができます。

収録曲は以下の通りです。

1. 風酒場
作詞：吉田旺、作曲：朴椿石、編曲：佐々永治
2. 海鳥に向う女
作詞：鳥井実、作曲：朴椿石、編曲：佐々永治

このシングルは、1979年の音楽シーンを代表する作品の一つであり、美空ひばりの幅広い音楽活動の一端を垣間見ることができます。また、朴椿石という韓国の作曲家が日本の歌謡界に与えた影響を示す重要な事例でもあります。

関連事項として、このシングルが発売された1979年の音楽シーンについても触れておくべきでしょう。この年は、多くの新しい音楽スタイルが生まれ、多様なジャンルの音楽が流行した年でした。その中で、「風酒場」は、昭和歌謡の伝統をしっかりと受け継ぎながらも、新しい風を吹き込んだ作品として、特別な位置を占めていると言えるでしょう。

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