食用コウモリ

食用コウモリについて

食用コウモリ（しょくようコウモリ）は、アジア・オセアニア・アフリカの地域で広く食材として用いられる動物です。特に、フルーツコウモリ（フルーツバットまたはオオコウモリ）が人気で、多くの南国ではレストランや屋台などで提供されています。このコウモリは、その独特な味わいから、一部の地域では高級食材としても扱われています。

地域ごとの食文化

食用コウモリは地域ごとに異なる調理法や提供スタイルがあります。南の国々では、まるごと一頭を串焼きや姿焼き、姿煮にするなど、見た目にも楽しめる料理が一般的です。地域によっては、頭部や内臓まで食べられることもあります。

アジアの食文化

インドネシアの北スラウェシ州に住むミナハサ族の家庭では、「パニキ」と呼ばれるコウモリ料理が伝統的に調理されています。この料理では、毛を焼いてローストした後にカレー風味に仕上げることが多く、ココナッツミルクやハーブ、香辛料を用いたスープ料理にもなります。肉の食感は牛肉に似ており、唐辛子をふんだんに使うため、辛い料理として知られています。

ラオスやカンボジアでもコウモリが食べられており、特に屋台でのおやつとしての人気があります。カンボジアではライルオオコウモリや小型のコウモリが用いられ、野菜と一緒に煮込む料理が楽しめます。また、ベトナムでは、コウモリを使ったかゆが家庭料理として親しまれています。フィリピンではかつて、ネグロスケナシフルーツコウモリが食材として利用されていましたが、現在は絶滅の危機に瀕しています。

中国南部では、フルーツコウモリが高級食材として扱われ、特に広東料理においては贅沢な料理として楽しまれています。日本にもフルーツコウモリが生息していますが、食用としては利用されておらず、いずれの地域でも絶滅危惧種に指定されています。

オセアニアの食文化

オセアニアのパラオやバヌアツでも食用コウモリが利用されています。パラオの料理では、ココナッツミルクや生姜、香辛料で煮込んだコウモリ肉が伝統的に食べられており、観光客が自らコウモリを選ぶことができるレストランも存在します。特にバヌアツでは、「ラプラプ料理」の一環にフルーツコウモリを使用した料理があります。

マリアナ諸島でのマリアナオオコウモリは、伝統的なチャモロ料理としてよく食べられていましたが、絶滅が危惧されています。グアムでは他の地域からオオコウモリが輸入されるなどして、食文化が存続されています。オーストラリアのアボリジニーの間でも、コウモリは伝統的な食材として重視されています。

アフリカの食文化

アフリカの一部地域でも、コウモリが食用として用いられています。特にブルキナファソでは、狩猟を通じてコウモリが捕獲されており、食材として利用されています。また、インド洋のセーシェルではクレオール風のカレー料理にコウモリが用いられています。

捕獲と保護

食用コウモリは農業での養殖が行われていないため、狩猟によって捕らえられます。しかし、コウモリに対する捕獲方法や文化は地域によって異なります。フィリピンのアエタ族やバヌアツの狩猟採集民は弓矢を使用し、ニューカレドニアでは観光客がハンティングを楽しむプログラムがあります。

コウモリの捕獲については、多くの国でタブー視されている場合があります。特にキリスト教の影響が強い欧州では、コウモリの食肉が禁じられることが一般的です。日本でもコウモリは鳥獣保護法により、保護対象となっており、捕獲には特別な許可が必要です。

感染症のリスク

注意すべき点は、コウモリが感染症の媒介となることがある点です。中国では2002年から2003年にかけてSARSが流行し、コウモリがその感染ルートと考えられています。また、2014年に発生したエボラウイルスや、最近の新型コロナウイルスの発生も、コウモリが関与している可能性があります。これにより、食用コウモリに対する警戒が強まっています。

このように、食用コウモリはその地域の食文化に深く根ざしている一方で、保護の観点からは様々な課題を抱えています。

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