飯島綾子

飯島綾子の生涯：舞台からラジオへ、多才な才能を開花させた女性

飯島綾子（いいじま あやこ、1907年 - 1954年9月25日）は、昭和初期に舞台女優、日本舞踊家、歌手、声優として多岐にわたる分野で活躍した人物です。本名は飯田日出子（いいだ ひでこ）。舞踊家としては藤間勘秀（ふじま かんひで）を名乗りました。

生い立ちと演劇との出会い

飯島綾子は、東京府東京市赤坂区（現在の東京都港区赤坂）で生まれました。幼少期に父親を亡くし、仕立物で生計を立てる母親のもとで育ちました。1921年、帝国劇場付属技芸学校（旧帝国女優養成所）に7期生として入学。同期には女優の河原崎しづ江や舞踊家の吾妻徳穂らがいました。養成所卒業後は、劇団芸術座に入団し、児童劇を中心に活動しました。また、俳優・井上正夫の愛弟子としても知られ、1926年には井上主演のサイレント映画『狂った一頁』に出演しています。

築地小劇場での活動

1928年、飯島綾子は築地小劇場に客演し、翌年には正式に入団しました。しかし、劇団員としての活動は短く、1929年の6月から7月頃には退団しています。その後、帝国劇場に戻り、かつての同級生たちと再び舞台に立ちました。

「元祖・声優」としての活躍

1930年頃から飯島綾子はラジオドラマ俳優（現在の声優）としての活動を本格化させ、数多くのラジオドラマに出演しました。同時期に作曲家・佐々紅華に歌唱力を認められ、歌手としても活動を開始し、1930年から1937年にかけてコロムビア・レコードで童謡や歌謡曲を多数吹き込みました。まさに、現代のアイドル声優の先駆けとも言える存在でした。この時期に松竹興業を退社し、フリーとなっています。さらに、1938年からはテイチクレコードで宣伝ナレーションにも挑戦しました。

舞踊家・藤間勘秀としての活動

飯島綾子は、舞踊家としても才能を発揮しました。藤間流五代目藤間勘十郎の門下生であり、師範の名から一文字を取り「藤間勘秀」と名乗りました。自身の自宅で研究生を指導し、発表会も開催していました。

俳優・三島雅夫との結婚とその後

1928年、築地小劇場での共演をきっかけに、飯島綾子は俳優の三島雅夫と恋仲になり、結婚を決めます。しかし、小劇場の内紛や周囲の反対により、結婚までには困難を極めました。約8年の交際を経て1936年に結婚したものの、三島が左翼的な新築地劇団に移ったことで、飯田家は激怒。夫婦は離婚を余儀なくされました。1939年に飯島綾子は芸能界を引退し、その後の1940年には、三島の所属していた新協劇団が強制解散され、三島自身も投獄されるという悲劇に見舞われます。この出来事がきっかけとなり、飯島綾子は心労から健康状態を悪化させ、長い間病に伏せることになりました。

晩年

戦後、飯島綾子は住居を青山に移し、療養生活を送りましたが、1954年9月25日に46歳という若さでこの世を去りました。彼女の墓所は、生誕の地である赤坂の赤坂不動尊威徳寺にあります。

飯島綾子の功績

飯島綾子は、舞台、ラジオ、音楽、舞踊と多岐にわたる分野で才能を発揮しました。特に、ラジオドラマ黎明期における声優としての活動は、後の声優文化の発展に大きな影響を与えました。また、その歌声は多くの人々に愛され、童謡や歌謡曲の分野でも存在感を示しました。激動の時代を生き、波乱に満ちた人生を送った飯島綾子ですが、その功績は今もなお語り継がれています。

ディスコグラフィー（一部）

シングルレコード
天国の唄（1930年・日本コロムビア）
地獄の唄（1930年・日本コロムビア）
帝都復興ソング（1930年・ビクター）
唐人お吉（1930年・日本コロムビア）
京はよいとこ（1931年・オデオンレコード）
ニッポン娘さん（1931年・日本コロムビア）
一つとせ（1932年・ヒコーキレコード）
あんころ和尚（1937年）
御伽歌劇（童謡オペレッタ）
軽飛軽助(1932年・日本コロムビア)
[茶目子の一日]
毬ちゃんの絵本(1933年・日本コロムビア)
目無し達磨 - 上下巻二部構成。(日本コロムビア)
蟲の音楽會(上・下)(日本コロムビア)
軍事物語 陸軍大臣と少女 - 上下巻二部構成。(日本コロムビア)
史劇 大楠公(ヒコーキレコード)
ナレーション
大豪華盤に就て（テイチク）
母の愛（上・下）（テイチク）
嬉しい頃（上・下）（テイチク）
器械説明レコード （テイチク）

出演作品

映画
1926年'>[狂った一頁]　-　娘
ラジオドラマ
ラヂオコメディー　勝ちか負けか(1929年)　-　吉井勝子
金貨の旅(1930年)
悲しき遍路
旅がらすの三人(1932年)
そら豆の煮えるまで(1932年)　-　少年
あわてものの熊さん(1932年)
少女と写真(1934年）
漫談博覧会「サーヴィス」(1935年)　-　妻
かなりや軒(1936年)　-　娘
舞台
築地小劇場公演
大寺学校(1928年11月・第80回公演)　-　生徒おてる
当世立志伝(1928年12月・第81回公演)　-　伯爵令嬢
櫻の園(1929年2月・第83回公演)　-　来客
夜の宿(1929年3月・第84回公演)　-　同宿人
帝国劇場公演
東京行進曲(1929年12月)　-　ダンサー
その他
珍説忠臣蔵(1933年)


飯島綾子は、その短い生涯の中で、多くの人々に感動と影響を与えました。彼女の多彩な才能と、激動の時代を生き抜いた強さは、今もなお私たちの心に響きます。

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