養魚池

養魚池（ようぎょいけ/ようぎょち）

養魚池とは、魚類をはじめとする水生生物を人工的に飼育し、あるいは繁殖させて増やすことを目的として、自然の地形を利用するか、または意図的に構築された水域のことです。食料資源の確保や、特定の種の保護・増殖、観賞用など、様々な目的で世界中で利用されています。

世界における歴史と多様性

養魚池の歴史は非常に古く、各地で独自に発展してきました。

古代中国

古代中国では、既に殷（いん）の時代から養魚が行われていたことが、甲骨文字などの記録からうかがえます。特にコイの養殖が盛んだったとされており、春秋時代の政治家・范蠡（はんれい）が著したとされる『養魚経』は、養魚に関する世界最古級の専門書として知られています。これは、いかに古くから組織的な養魚が実践されていたかを示す証拠と言えるでしょう。

中世ヨーロッパ

中世ヨーロッパでは、特に修道院において養魚池が重要な役割を果たしました。カトリック教会では特定の期間に肉食が禁じられるため、魚が貴重なタンパク源でした。修道院の敷地内に池を設け、魚を安定的に供給するシステムが確立されていたのです。これは宗教的な慣習と食料供給を結びつけた独特な発展形態です。

日本

日本では、古くから農業、特に水田耕作と関連付けながら、コイなどの淡水魚が養殖されてきました。これは、水田の維持に利用される水路やため池が養魚にも適していたためと考えられます。近代以降は、サケやマス、イワナといった渓流魚の卵を孵化させ、稚魚を育成するための施設としても広く利用されるようになり、河川への放流や養殖産業の発展に貢献しています。

ハワイ先住民

太平洋に位置するハワイ諸島の先住民（カヌー・ピープル）も、独自の養魚技術を発展させました。彼らは、単に海で魚を捕獲するだけでなく、陸地や特に海岸線に精巧な養魚池を多数構築し、魚介類を育てていました。これらの池は、現在もハワイの文化遺産として大切に保存されている場所があります。

ハワイ先住民の養魚池

ハワイの養魚池は、その構造と立地において多様性が見られます。カウアイ島にある「メネフネ養魚池」のように内陸部に位置するものも存在しますが、その多くは海岸線沿いに造られています。これらの沿岸部の池は、多くの場合、地形学的にアンキアライン池と呼ばれる、淡水と海水が混じり合う汽水域の地形を利用しています。海からの潮の満ち引きを利用して稚魚を取り込み、池の中で育て、壁や水門で魚を閉じ込める仕組みになっていました。これらの古代の養魚池の跡は、現在でもハワイ島にあるカロコホノコハウ国立歴史公園や、ワイコロア・ビーチ周辺などで見学することができ、当時の高度な土木技術と自然との共生を知る貴重な手がかりとなっています。

関連する施設

養魚池や養殖施設に関連するものとして、日本で広く普及しているのが「釣り堀」です。これは、レクリエーションや趣味として釣りを楽しむために、魚が放流された人工的な池や、海域の一部を区切った「海上釣り堀」などが含まれます。

関連項目

養殖業
石干見（いしひび）

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