馬伝染性子宮炎

馬伝染性子宮炎（Contagious Equine Metritis）

馬伝染性子宮炎（うまでんせんせいしきゅうえん、英: Contagious Equine Metritis, CEM）は、Taylorella equigenitalisという細菌が原因で発生する馬の感染症です。この感染症は、家畜伝染病予防法に従って届出伝染病として指定されており、特に繁殖において深刻な影響を及ぼすことがあります。日本では1980年以降、毎年のように発生が確認されていましたが、2005年以降はその報告が途絶えています。

原因

Taylorella equigenitalisは、球桿菌または桿状菌の一種で、好気性の環境でよく発育します。この細菌は、チョコレート寒天培地で特に育成が良好です。検査においては、カタラーゼ、オキシダーゼ、フォスファターゼが陽性であることが確認されます。この感染は主に交配を通じて伝播しますが、希に汚染された水などからの経口感染も可能です。

症状

この感染症の症状は、性別によって異なります。雄馬は通常無症状ですが、キャリアーとして感染を保有する可能性があります。一方、雌馬では、子宮頸管炎や膣炎を伴う子宮内膜炎が主な症状として現れます。この結果、不受胎や早期発情が繰り返され、稀に流産を引き起こすこともあります。

診断

馬伝染性子宮炎の診断は、ユーゴンチョコレート寒天培地を使用した炭酸ガス培養によって細菌を分離する方法が一般的です。また、PCR（ポリメラーゼ連鎖反応）技術も用いて診断が行われます。補助的な検査として、CF（補体結合反応）やHI（ヘモグルチニン阻止試験）なども有用です。

治療

治療方法としては、まず生殖器をクロルヘキシジンで洗浄し、消毒を行います。その後、アンピシリンやフラジオマイシンなどの抗菌剤を使用して感染を制御します。しかし、治療後に再度Taylorella equigenitalisが確認された場合には、陰核洞や陰核の切除手術が必要となることがあります。

予防

現時点では有効なワクチンが開発されていないため、馬伝染性子宮炎の予防策としては、感染している可能性のある馬との交配を避けることが最も重要です。新たな感染を防ぐためには、健康管理と監視が不可欠です。

参考文献

• - 獣医学大辞典編集委員会編集『明解獣医学辞典』 チクサン出版 1991年 ISBN 4885006104
• - 清水悠紀臣ほか『動物の感染症』 近代出版 2002年 ISBN 4874020747
• - 見上彪監修『獣医感染症カラーアトラス』 文永堂出版 2006年 ISBN 4830032030

外部リンク

• - 家畜の監視伝染病-馬伝染性子宮炎-農研機構
• - 馬編-馬伝染性子宮炎-家畜疾病総合情報システム
• - 感染症シリーズ -馬伝染性子宮炎-

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