馬場愿治

馬場 愿治（ばば げんじ）は、幕末の万延元年8月24日（1860年10月8日）に生まれ、昭和15年（1940年）11月13日にその生涯を閉じた日本の著名な裁判官であり、法学博士です。大審院の部長を務めた後、中央大学の学長として教育界でも重要な役割を果たしました。

生涯

馬場愿治は、会津藩の士族の家に生まれ、後に福島県議会議員を五期務めた馬場庄平の次男として育ちました。地元の会津若松英語学校などで学んだ後、上京します。上京後は、教育者として名高い中村正直の私塾を経て、官立の東京英語学校に進みました。さらに研鑽を積み、東京大学予備門に進学し、明治18年（1885年）7月には東京大学法学部を次席という優秀な成績で卒業しています。

司法官として

東京大学卒業後、馬場は司法省の御用掛となり、東京始審裁判所に配属されて司法官としての道を歩み始めました。その後、横浜地方裁判所、東京地方裁判所、東京控訴院での勤務を重ね、明治29年（1896年）には浦和地方裁判所の裁判長に昇任します。その二年後には大審院判事に任じられ、日本の司法の枢要に携わることとなりました。明治32年（1899年）には、約一年間にわたり海外への出張を経験し、見聞を広げました。明治39年（1906年）から大正2年（1913年）にかけては、函館および広島の控訴院長を務め、地方の司法を統括しました。その後、大審院の民事部部長に就任し、重要な民事裁判に関わりました。大審院在任中には、博士会の推薦により法学博士の学位を授与されています。また、判事検事登用試験委員長や弁護士試験委員長も兼務し、後進の育成や法曹界の質の向上にも貢献しました。大正12年（1923年）2月に裁判官を退官する際には、長年の功績が認められ、親任官待遇を受けることとなりました。

教育者・中央大学での活動

馬場は司法官としての激務の傍ら、教育活動にも非常に熱心でした。大学卒業直後から英吉利法律学校や東京専門学校（現在の早稲田大学）で教鞭を執り始め、その後も第一高等学校、東京高等商業学校（現在の一橋大学）、慶應義塾、専修学校、和仏法律学校など、多くの教育機関で法学を講じました。特に中央大学との関わりは深く、大正6年（1917年）には同大学の理事に就任します。大正12年（1923年）には学長事務取扱を務め、大正15年（1926年）から昭和5年（1930年）にかけては学長として大学の運営を主導しました。学長在任中には、大学の校舎を神田駿河台へ移転させるという一大事業を推進・実現させ、また現在の中央大学高等学校の前身にあたる中央大学商業学校の設立に尽力しました。学長を退任した後も、顧問として大学の発展に継続的に関与しました。

その他の活動と栄典

公職の他にも、馬場愿治は様々な組織に関与しました。川面凡児によって創立された宗教団体である稜威会の第二代会長を務め、また郷里の会津出身者の集まりである会津会の会員および評議員でもありました。長年の功績に対して、高等官一等、正三位勲一等瑞宝章といった高い位階や勲章が授与されています。彼の墓所は東京都の青山霊園にあります。

著作

法学者としても多くの著書を残しており、その主なものには以下のようなものがあります。

『商法』（東京法学院、1893年）
『商事寄託法』（東京法学院、1894年）
『商事契約法』（東京法学院、1894年）
『法理学原論』（東京法学院、1894年）
『民法総論』（東京専門学校、1896年）
『売買法』（東京法学院、1897年）
『修正保険法草案講義』（東京法学院、1898年）
『保険法』（東京法学院、1899年）
『契約各論』（東京法学院、1901年）
『債権原因論』（東京法学院、1906年）
『物権法第二部』（中央大学、1910年）
『民法総論』（東京法学院、出版年不明）
「英国ニ於ケル民事訴訟法ニ関スル演述」（『欧米派遣法官演述筆記』収録、司法省総務局、1900年）
『衡平法原論』（出版社等不明）

これらの著作は、明治・大正期の日本の法学教育および実務において重要な役割を果たしました。馬場愿治は、司法官、教育者、そして学者として、日本の近代法制度の発展に多大な貢献をした人物です。

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