駅起田

駅起田についての詳細

駅起田（えききでん）は、古代日本において駅の維持・運営に必要な財源を確保するために設けられた田のことを指します。この制度は、主に大宝律令に基づいて制定され、後の養老律令でも「駅田（えきでん）」という名称に変わって継続されました。然而、これに関しては様々な問題点が存在しました。

養老律令における駅起田の設置

養老律令に記載されている田令によれば、駅起田は駅家の近隣に配置されていました。大路にある駅には4町、中路には3町、小路には2町の駅田が設置され、これらは「不輸租田」として扱われていました。駅起田は耕作され、そこで収穫された米は「駅起稲（駅稲）」と呼ばれました。このように、駅起田の制度は駅の運営を支える重要な役割を果たしていました。

制度の変遷と廃止

大宝律令における駅起田の具体的な規定は不明ですが、養老律令との大きな違いはなかったと考えられています。駅起田は駅戸によって耕されており、収穫物は駅の運営費として用いられました。しかし、天平11年（739年）に官稲混合が行われると駅起稲は正税に統合され、駅の運営はこれに依存するようになりました。結果として、駅起田は次第に廃止されたと見られています。

駅田と駅稲の再設置に関する議論

天平宝字元年（757年）には養老律令のもとで駅田と駅稲に関する新たな規定が施行されましたが、これが官稲混合以前に実際の状況を反映したものだったのかどうかには多くの議論が存在します。特に、官稲混合直後である天平12年（740年）に作成された「遠江国浜名郡輸租帳」を最後に駅起田に関する記録が見られなくなることから、この制度が空文であった可能性が強いとされています。

駅料田の存在

10世紀に入ると、正税制度が衰退し始めます。それに伴い、駅の運営資金確保のために「駅料田」と呼ばれる新たな仕組みが設けられるようになりました。このことは、尾張国解文によって確認されており、駅起田の制度が完全に廃れたわけではなく、時代に応じて変化していったことを示しています。

参考文献

• - 田名網宏「駅田」（『国史大辞典 2』（吉川弘文館、1980年））
• - 鐘江宏江「駅起田」（『日本史大事典 1』（平凡社、1992年））
• - 木下良「駅田」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年））

関連項目

• - 伝馬料田

駅起田の制度は、古代日本の交通と物流を支える重要な側面を担っていたものの、時代の変遷とともにその形態や重要性が変化していったことがわかります。このような制度の理解は、日本の歴史を学ぶ上で欠かせない要素となっています。

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