駒形神社

駒形神社について

駒形神社は、岩手県に鎮座する歴史と格式のある神社です。奥州市水沢に本社を構え、胆沢郡金ケ崎町には駒ヶ岳山頂の奥宮と、西根雛子沢の里宮があります。この神社は、古くから「駒形大神」として総称される6柱の神々を祀り、特に馬の守護神として信仰を集めてきました。また、式内社、旧社格は国幣小社であり、現在は神社本庁の別表神社となっています。

祭神

駒形神社の祭神は以下の6柱で、「駒形大神」と総称されます。

天照大御神 （あまてらすおおみかみ）
天常立尊 （あめのとこたちのみこと）
国狭立尊 （くにのさたちのみこと）
吾勝尊 （あかつのみこと）
置瀬尊 （おきせのみこと）
彦火尊 （ひこほのみこと）

これらの神々は、駒ヶ岳の神霊を人格神に比定したものとされ、中近世の神仏混交期に、駒ヶ岳外輪山の各峰が天神地祇に擬せられたことに由来すると考えられています。具体的には、最高峰の大日岳に天照大神、第二峰の駒ヶ岳に天照大神の子である吾勝尊がそれぞれ対応するといった具合です。他にも、宇賀御魂大神、天忍穂耳尊などを祭神とする説や、毛野氏の祖神とする説も存在します。

駒形神は、馬の守護神として知られ、馬頭観音や大日如来と習合し、東日本各地で信仰されています。この背景には、古代にこの地域が軍馬の産地であったことが関係していると考えられています。

歴史

駒形神社は、駒ヶ岳を祀る神社として、明治以前は山頂の本宮（奥宮）と、北上市と金ケ崎町の里宮で奉斎されていました。現在の水沢本社は、明治36年（1903年）に新設されたもので、それ以前は鹽竈神社の境内地でした。以下に、駒形神社の歴史について詳しく見ていきましょう。

創建

創建については、様々な伝承が残っています。

社伝の一つによれば、雄略天皇21年に籠神社から宇賀御魂大神を勧請し、山頂に祀ったのが始まりとされています。
別の伝承では、景行天皇40年に日本武尊が東征の際、蝦夷平定のために6柱の神々を勧請したとされています。
坂上田村麻呂が愛馬を祀ったのが始まりであるという伝承や、慈覚大師が廻国した際に駒ヶ岳山頂に本宮を造営したという伝承、源義家が前九年の役で戦勝祈願をしたという伝承も残っています。

また、上毛野氏一族がこの地に来住した際、駒ヶ岳を上毛野氏の氏神である赤城山に見立てて祀ったとする説もあります。この説によれば、駒形山の名称は、毛野氏が勢力を拡大する中で、赤城山に見立てた山を「駒ヶ岳」と名付け、駒形大神を祀ったことに由来します。さらに、この駒形神社の祭神は赤城山の神と同一か、深い関連を持つ存在であると考えられています。この説を裏付けるように、『続日本後紀』には、上毛野氏と胆沢との関わりを示す記述も見られます。

さらに、「駒形」の名称は、高麗が「コマ」と呼ばれていたことから、「高麗唐」が転訛したとする説や、箱根神社の摂社である駒形神社に高麗大神が祀られていることからも、朝鮮との関連が指摘されています。

奥宮は元々、駒ヶ岳の南にある大日岳山頂にあったという伝承も存在します。

概史

国史によると、仁寿元年（851年）に「駒形神」の神階が正五位下に、貞観4年（862年）に従四位下に昇叙されています。従四位下は陸奥国内で最高位であり、駒形神社側では、坂上田村麻呂の崇敬が厚かったため、胆沢の鎮守府から神階を高くすべきという申し出が何度もあったためと説明しています。

『延喜式』神名帳には、陸奥国胆沢郡に「駒形神社」と記載されており、式内社に列しています。全国の駒形神社の中で、神名帳に記載されているのは当社と宮城県の駒形根神社の2社のみとされています。

平安時代には、坂上田村麻呂だけでなく、源頼義、義家、平泉の藤原氏も駒形神社を崇敬しました。藤原秀衡が銅で駒形の神の像を作って祀ったという記録からも、藤原氏の信仰の篤さが窺えます。

江戸時代には、駒ヶ岳は仙台藩と盛岡藩の境界であり、里宮はそれぞれの藩内に一つずつ存在しました。山頂の本宮は、両藩によって20年ごとに交互に建て替えられていました。

明治4年（1871年）に、山頂の本宮が国幣小社に列せられるにあたり、参拝の便を考慮して、当時の水沢県庁に近い鹽竈神社の本殿が仮遥拝所となりました。その後、社殿が改修され、明治36年（1903年）に山頂の神霊が遥拝所に遷され、鹽竈神社の社殿等が駒形神社に編入されました。鹽竈神社は境内別宮の春日神社に合祀され、社名が「鹽竈神社」に改称されました。

戦後、駒形神社は神社本庁の別表神社となり、近年では陸中国一宮とも称されるようになりました。2010年には、山頂の奥宮にある老朽化した社殿が解体され、新たに社殿が造営されました。

境内

本社

本社境内と水沢公園は、ヒガンザクラ系の桜の名所として知られ、樹齢250年から300年にもなる老木があります。一帯は「駒形神社及び水沢公園のヒガン系桜群」として、岩手県指定天然記念物に指定されています。

奥宮・里宮

奥宮: 駒ヶ岳山頂に鎮座し、近世には「馬頭観音堂」と呼ばれていました。
雛小沢里宮: 金ケ崎町にあり、国常立尊、大日孁貴尊など、複数の神々を祀っています。

摂末社

本社境内には、以下の摂末社があります。

鹽竈神社: 鹽竈神などを祀り、元は独立した神社でしたが、駒形神社の境内別宮となりました。
山神社: 木花開耶姫神、大山祇神を祀っています。
水沢招魂社: 郷土出身の国事殉難者を祀っています。

関係社

岩崎の元里宮: かつては里宮でしたが、現在は本社との関係は絶たれています。

祭事

駒形神社では、年間を通して様々な祭事が行われています。

月次祭（毎月1日、19日）
歳旦祭（1月1日）
祈年祭（2月17日）
奉遷記念大祭（5月3日）
招魂社大祭（6月2日）
大祓式（6月30日）
奥宮登拝祭（8月1日）
別宮塩釜神社祭（8月10日）
例大祭（9月19日）
末社山神社祭（10月12日）
新嘗祭（11月23日）
大祓式（12月30日）
除夜祭（12月31日）

文化財

岩手県指定天然記念物: 駒形神社及び水沢公園のヒガン系桜群

現地情報

本社所在地: 岩手県奥州市水沢中上野町1-83
奥宮所在地: 岩手県胆沢郡金ケ崎町西根字駒ヶ岳（駒ヶ岳山頂）
里宮所在地: 岩手県胆沢郡金ケ崎町西根雛子沢13
* 交通アクセス: JR水沢駅から徒歩約13分

まとめ

駒形神社は、豊かな自然と歴史に彩られた、岩手県を代表する神社の一つです。その歴史は古く、数々の伝承や文化財を有し、地域の人々にとってかけがえのない存在となっています。

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