高屋窓秋

高屋窓秋（たかやそうしゅう、1910年 2月14日 - 1999年 1月1日）は、俳人であり、本名は正国（まさくに）です。彼は従来の写生主義や花鳥諷詠といった俳句の伝統的な手法から離れ、独自の句作を追求しました。その結果、昭和初期の新興俳句運動において重要な役割を果たしました。

生涯

1910年、高屋窓秋は名古屋市東区で生まれました。父は陸軍士官であり、両親の故郷である名古屋で誕生しましたが、幼少期からは東京で過ごしました。1923年の関東大震災を経験した後、父の転勤に伴い熊本へ移住しました。

1926年、友人に誘われて「ホトトギス」派の俳人である草野駝王や有働木母寺が指導する句会に参加しました。その際、「寅秋子」という俳号を与えられました。これは丙寅年の秋だったことに由来し、後に「寅」を「窓」に変えて窓秋と名乗るようになりました。また、草野駝王から水原秋桜子の句文集『南風』を勧められ、その句風に強く惹かれました。

1927年に私立九州学院中学を卒業した後、初期の結核を患い、療養生活を送ることになります。療養中も、「ホトトギス」や「破魔弓（後の馬酔木）」に投句を続けました。その後、父の転勤により淡路島、京都市伏見、千葉市と住居を移し、1930年に東京に戻りました。

同年、「馬酔木」の発行所を訪れ、正式に水原秋桜子の門下生となりました。1931年には法政大学に入学。同年、水原秋桜子が「自然の真と文芸上の真」という論文を「馬酔木」に発表し、「ホトトギス」を脱退したことに伴い、高屋窓秋を含む門下生たちは結束を強めました。師である秋桜子の主観写生の考え方に基づき、心象を描く独自の句風を追求し、翌年には代表句の一つである「頭の中で白い夏野となつている」が誕生しました。当時、水原秋桜子が推奨していた連作俳句を多く制作し、「馬酔木」の編集や経営面でも貢献しました。1933年に「馬酔木」が同人制に移行してからは、石田波郷や石橋辰之助とともに、入門者の指導も担当しました。

1935年頃から、それまでの唯美的な作風に変化が見られ、当時の社会情勢や個人的な感情を強く表現するようになりました。同年、「馬酔木」5月号を最後に同誌を離脱しました。1936年7月には第一句集『白い夏野』を刊行。翌年5月には、連作で構成された第二句集『河』を刊行しました。この句集には無季の句や定型を離れた句が多く含まれています。山本健吉は『現代俳句』の中で、『河』を「連作というより新しい詩形式」と評し、「試みとしては面白い」と評価しました。

『河』の刊行直後、渡辺白泉の誘いで「風」に参加。1938年には、「馬酔木」を離れた石橋辰之助らと共に「京大俳句」に参加し、「風」が終刊して合流した「広場」では選句委員を務めました。この時期に岩本邦と結婚し、6月には満州電電に職を得て満州へ渡りました。これにより、「京大俳句」や「広場」から離れ、しばらくの間作品の発表が途絶えました。

1946年に帰国し、翌年から「俳句人」で満州時代に制作した句を発表しました。この時期の句風は写実的な傾向が強く、「夏河の碧の湛への湛へとよ」「昨日の河さゞなみすでに凍てしなり」「茜さし童女比ぶるものもなく」などの作品が知られています。1947年には現代俳句協会の創立とともに会員となり、1948年には「天狼」の創刊に参加しました（1981年まで）。1951年にはラジオ東京に入社しました。

1953年には第三句集『石の門』を刊行しました。この句集には290句が収録されています。1958年には「俳句評論」に参加しましたが、1951年以降は作句を中断していました。しかし、1970年に「俳句研究」で再び作品を発表するようになり、その後しばらくの間は作品発表が続きました。1976年には、第四句集「ひかりの地」を含む『高屋窓秋全句集』を刊行しました。この全句集には330句が収録されています。高屋窓秋は寡作であり、1975年以降も作句を中断するなど、断続的に作品を発表していました。1991年には同人誌「未定」に参加しました。1992年には第五句集『花の悲歌』を刊行し、1999年に88歳で亡くなりました。没後の2002年には、『高屋窓秋俳句集成』が刊行されました。

句風

高屋窓秋の句は、従来の俳句の形式に捉われず、自由な発想と独自の感性によって生み出されました。特に心象風景を描くことに長けており、彼の句には、時に社会的な感情や個人的な内面が深く表現されています。代表句としては、「頭の中で白い夏野となつている」「ちるさくら海あをければ海へちる」「山鳩よみればまはりに雪がふる」などが挙げられます。

参考文献

『富澤赤黄男高屋窓秋渡邊白泉集』朝日文庫、1985年（三橋敏雄解説）
齋藤慎爾、坪内稔典、夏石番矢、榎本一郎編『現代俳句ハンドブック』雄山閣、1995年
山本健吉『定本現代俳句』角川書店、1998年
『高屋窓秋俳句集成』　沖積舎、2002年　略年譜、栞（俳論・俳文略年譜）

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